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ラッシャー貴子|イギリス

イングランドもロックダウン2.0に突入

ロックダウン2.0はミステリアスな霧の朝でスタートした(筆者撮影)

イングランドは11月5日からまたロックダウンに入った。

これで12月2日までの4週間、食品や薬の買い物、看護・介護、運動、家でできない仕事などをのぞいて、わたしたちは基本的に家にいることになる。パブやレストランは営業停止でテイクアウトの営業のみ。美容院、スポーツジム、美術館、映画館、ファッション関係など、生活品以外を扱うところは閉鎖される。お葬式はできるが、結婚式はだめ(夫の娘がはらはらしながら7月に結婚式をした、という記事はこちら。あの時にしておいてよかった!)。

ただ、今回のロックダウン2.0(なぜか2.0なのです、2ではなくて)は春先の外出禁止よりだいぶ規制がゆるく、暮らしの中でできることがずっと多い。例えば学校・大学はこれまでどおり授業をしているし(寮にいる大学生はクリスマス休暇まで家に帰れないそう)、歯医者も眼鏡屋も開いている。ガーデンセンターやDIYの店はロックダウン生活に役立つということで営業が許され、春には閉めるしかなかった必要品以外の店も、ネットで注文・支払いをすませた品物を店頭で受け取る方法(Click & Collect)でなら店を開けることができる。清掃や工事などの仕事が目的で個人宅に入ることも許されるし、屋外でなら他の世帯の人ひとりと会うこともできる(前回は他の世帯の人とはまったく会うことはできなかった)。

ベンチ - 1.jpg

(前回はテープが貼られて使うことができなかったベンチもロックダウン2.0では座れます。筆者撮影)

春のロックダウンでは、持病のある人や70歳以上の高齢者は外出を控えるように言われたが、今回は外出が制限されるのは限られた深刻な既往症や病状のある人のみ。だから健康なお年寄りは大手をふって散歩に出かけられるし、同居していない人ひとりと会うこともできる。春から夏にかけて孤独で気が滅入ってしまったひとり暮らしの人の話をずいぶん聞いたので、これはきっと歓迎されているはず。介護施設への訪問も、家族が戸外や窓越しに会うことは許され。前回のロックダウンでの問題、特に高齢者や単身者の精神衛生にかかわる問題がずいぶん改善されていて、すばらしい。

ちなみに6月に発表されたサポートバブル(BBCは「支援の安全圏」と訳している)という考えもずいぶん浸透してきている。これは大人ひとりの世帯(18歳以下の子ども含む)では、他のひとつの世帯を決めて、同じ世帯として一緒に行動できるという仕組みのこと。同じ世帯とみなされるので、会えるだけでなく、体に触れたりハグしたりすることもでき、家族と離れて暮らすひとり暮らしの人たち(特に高齢者やシングルペアレント)の心強い味方になっている。

本屋 - 1.jpg(今回は書店も店を開けていた。ただし店内に入れるのはClick & Collectの客のみ、つまりネットで事前に注文・支払いをして店頭では品物を受け取るだけだ。パブやカフェのテイクアウトもクリック&コレクト式が多い。筆者撮影)

サバイバルの道に知恵をしぼった商店も多い。ロックダウンに入る少し前から地元の花屋では店頭に果物や野菜を置くようになったのだが、その店はロックダウン後も営業している。本来なら必要品に当たらない花と一緒に食べものを売ることで、必要品の店として営業が認められるようだ。そうまでして店を開けようとする気持ちがたくましく頼もしい。わが町にあるもう一軒の花屋はロックダウン後は閉まっているので、それぞれの店なりに計算があるのだろう。

花屋 - 1.jpg

(この花屋で扱っている果物や野菜がまたなかなか新鮮でいい感じ。筆者撮影)

というわけで、今回は規制がゆるい上に4週間という期間限定、さらに春に一度経験しているおかげもあってか、ロックダウン2.0前には大きな混乱もひどい買い占めもなかったし、気持ちもそれほど重くならなかった。ちなみに、わたし自身は普段からほとんど家で仕事をしているので、生活自体はそれほど変わらない。

だが実際に始まってみると、なんだか不思議な感じだった。子どもたちは学校に出かけていくので、送り迎えをする大人を含めてたくさんの人が家の前を歩いていて、車もぶんぶん通っていく。前回、ロックダウン開始を境に一気に人が出歩かなくなって、車の音もしなくなり、美しい鳥のさえずりだけが妙にあちこちに響いていたというショックが強烈すぎたのかもしれない。だがそれにしても、なんだかロックダウンらしくない。

開始から2日め、午前中に仕事で出かけてきた夫が、どこも人が多くてあまり変わらない、と言うので、夕方の散歩にわが町の商店街を歩いてみた。あら、本当だ。道路は帰宅ラッシュでいつもと同じくらい渋滞していて、買い物袋を持った人もたくさん歩いている。通りがかったバス停では、顔見知りらしい男女が「全然ロックダウンって感じじゃないね」「みんな普通に出かけてるもんね。どこどこのスーパー、めちゃくちゃ混んでたよ」と話していた。人の暮らしが妨げられないのはよいことに違いないけれど、これでロックダウンの効果はあるのかな、とちょっと不安になる。 

しかし、週末に入った3日めの土曜にはずいぶん人の動きが減った。やたらに商店街に観察に行くのもはばかられるので、この日の夕方の散歩は今度は国道の方に歩いて行ってみたのだが、車の数はいつもの週末より間違いなく減っていた。よかった。きっと平日は学校や仕事に行く人がいるだけなのだろう。前のロックダウンと規制が違うのだから、目に入るものや受ける感覚が違って当たり前なのに、つい神経質になってしまったと反省、反省。とはいえやっぱり、平日にあんなに人が歩いていてロックダウンの意味があるのか、体感的には疑問が残る。正解がわからないって辛いことだ。

イングランドの新型コロナウィルス感染者数は数字の上では急増しているが、実はこれは検査数が圧倒的に増えたからだそうだ。そしてその増加自体も横ばい状態に入っているという統計があり、ロックダウン2.0は主にNHS(無料の国民保健サービス)での患者数を増やしすぎないために行ったとも言われている。とはいえ、ロックダウン実施が発表された翌日に、期間延長の可能性を閣僚がほのめかしたりして、コロナ禍からの出口は相変わらず見えにくい。今はそれぞれが自分にできることをして、あとはできるだけ明るい気持ちで過ごすことが大切だろうな、と改めて感じている。

紅葉 - 1.jpg(晩秋のロンドン。これから冬至に向かって朝晩はさらに暗くなる。筆者撮影)
 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』(コーリー・スタンパー著、左右社)など。英国旅行ライターも少し。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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