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農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり

森田早紀|オランダ

人にも物にも新たなチャンスを ~複数のミッションを組み合わせるオランダの社会的企業~

(iStock - PhotoAttractive)

社会的・環境的課題に取り組むことを第一ミッションとしつつ、ビジネス的アプローチと組み合わせて解決する、社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)。

オランダでは400以上の団体が社会的企業として全国ネットワークのSocial Enterprise NLに加盟しているが、実際には5000から6000の社会的企業があると推定されている(Keizer et al., 2016)。

彼らは様々なミッションを持っている。例えば就労支援、持続可能な生産、食料システムの変革、フェアトレード、社会的結束。そして、複数のミッションを組み合わせているところが多くある。

特に就労支援を第一のミッションに持つ社会的企業(全体の48%; n = 210)は、同時に第二のミッションとして社会的結束(うち18%)や循環型・持続可能な生産(うち14.5%)を掲げている(Social Enterprise NLの年次報告書より)。これは他のどのミッションの組み合わせよりも強い関係性だ。

何故だろう?

今回の記事では、就労支援と循環型・持続可能な生産を組み合わせる動機を、企業内外の視点からオランダの事例を挙げつつ分析してみる。

経営者や企業の信念

就労支援と循環型・持続可能な生産は、方向性が似ていて相性がいい。例えば「人にも物にも新しいチャンスを与える」椅子専用修理・リサイクルショップがある。

また、食べることに関する信念に基づいて、就労支援も行っている社会的企業がある。食とは命を祝うものであるべき、そこには人々の幸せも必須。材料や製法にこだわり、働き辛さを抱えた人々と共に手作りのクラッカーを焼く。

このような想いを持つ社会的企業の元代表者の方にお話を伺ったときの記事はこちらから➡前編後編

ビジネスとして

リサイクルや修理を大切にする循環型・持続可能な生産はどちらかというと、使い捨てを前提とした生産に比べて手間暇がかかり、人手を必要とする。

しかし、大量生産・機械化を軸とした企業には真似のできない付加価値を生むことができる。ここで活躍するのが人の手、仕事を必要としている人々だ。

自転車大国のオランダでは、毎年100万台の自転車が売買されると同時に、同じくらいの数が捨てられているらしい。その部品を使って新たな自転車の組み立てを行う社会的企業がある。

また、オーガニック野菜の栽培には農薬の使用量や種類を格段に制限したり、化学肥料を使わなかったりする分、草取りやその他作物の世話に時間がかかる。また、オーガニック栽培に加えて不耕起(土を掘り起こさない方法)や多品種少量生産に取り組んでいる農家も多くいて、これらも人手を必要とする。つまり、様々な種類の仕事が溢れているわけだ。

IMG_20210430_144320.jpg

(筆者撮影 2021年 オランダのオーガニック・ケアファームにて。土を圧縮したりむやみに掘り起こしたりしないよう、小さく軽い機械を使って畝を準備する)

農福連携の取り組みには他にも様々な強みがある➡関連記事

このように、循環型の生産と就労支援を組み合わせることで、独自の価値が生まれる可能性が沢山あるのだ。

外からの期待に応えるため

社会と環境への貢献、両方に取り組む理由はこのような内なるものには限らない。一方に取り組むとなると、特に社会的企業としてはもう一方にも取り組む責任が伴う、少なくとも責任大きくなるだろう。一貫性を持った企業であることが期待される。さもなければ、環境面の配慮はしているのに、働く人は無造作に扱っているの?とガッカリされることであろう。そして信用を失ってしまうかもしれない。

利益中心の企業が行うCSR(企業の社会的責任)活動とはまた違う、より大きな度合いの期待が、社会的・環境的ミッションを中心に回る社会的企業にはあるのだと思う。

重くなりすぎず、欲張らず

ただし、あれにもこれにも手を付けると、買い手にとってどこか重く、手に取るのを躊躇する商品になってしまうかもしれない。

明るさ・楽しさ・軽やかさを忘れないこと。

オランダのクッキー工場で、就労の場を提供しながらも、できるだけ環境に配慮しパーム油を使用しなかったり、ホームレスの方の支援も手掛けたりしている社会的企業がある。カッコよく遊び心のあるデザインで、味の評価も高い。

私自身、心身の在り方と、畑の在り方と、社会の在り方は繋がっているような気がして、それらすべてに包括的に取り組みたいと考えている。軸のしっかりした人になりたい 自分の信じることを生きていきたい。

でももちろん、ユーモアやセンスは欠かさずに。

関連記事

社会課題を解決しようとする企業のジレンマ➡リンク
オランダの就労支援に関する記事➡ 参加法#1解説 参加法#2失敗&これからどうなる?

 

Profile

著者プロフィール
森田早紀

高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。

Instagram: seedsoilsoul
YouTube: seedsoilsoul

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