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ドバイ像の砂上点描

Mona|UAE

体感温度50度超!なぜ大丈夫?酷暑を生きる中東の知恵

(Dmitry_Chulov-iStock.)

ドバイは体感温度が毎日50度超え!

今年の日本は猛暑だと聞く。熱中症で倒れる人も後を絶たないらしい。その一方で私の暮らすドバイは、気温40度は毎日越えているし、体感温度はいとも簡単に50度を越える。

(体感温度とは、気温に湿度や風速などを加味し、実際に身体が感じる温度のこと。例えば、同じ30度でも、カラりとした30度と、じめじめと湿気がある30度では、後者の方が体感温度は高くなる。)

しかし、当地のニュースでは「熱中症に注意しましょう」なんていう文言は流れない。更に今年の夏はマスクの着用義務まである。気温が40度だろうが何だろうが、マスクを着用しなければ3,000AED(約9万円)の罰金だ。

今回は「そんな暑い地域で、エアコンがない時代はどうしていたの?」「中東の夏の生活はどうなっているの?」というお話をお届けしたい。

電気のない時代、中東の人はどう夏を凌いだの?

当たり前だが、中東に住んでいるのも同じ人間。全くもってこの暑さが平気なワケではない。そこで、電気がなかった時代、イラン中央部〜南部の乾燥した沙漠地帯(※)に住む人々は、天然のエアコンを作り出した。

以下は、イラン中部のヤズドという街の写真である。家屋の上に、太い煙突のような、四角い塔が立っているのが見えるだろう。それが、天然のエアコン「バードギール」だ。

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(ヤズドの街並み。Dmitry_Chulov-iStock.)

ペルシア語で、バード(باد)は「風」。ギール(گیر)は「得る」。風取りタワーという意味の、伝統的ペルシア建築だ。

バードギールの仕組みは、以下の通り。

一般的には上記の写真のように四角柱の形をしており、各側面に穴があいている。側面の穴から、塔へ風が入る。

塔の中は、1本の煙突状・・・ではない。内部には、真上から見て十字になるように仕切り壁があり、風の通り道が4つに分かれているのだ。(仕切り壁がなければ、穴から塔に入った風は、そのまま正面の穴へ通り抜けていってしまう)

その塔を、下へ下へとくだった風が、まずたどり着くのは貯水槽や池。そこで水に当たった風は、温度が下がる。こうして冷えた風が送り出される。その先にあるのが、人間の居住する空間だ。

これが、沙漠の民が作り出した、天然のエアコンの仕組みである。

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(バードギールはヤズドの街の風景の象徴だ。Elena Odareeva-iStock.)

一言で「イランにある」「ペルシア建築」と言っても、現在のイランという国家の領域全体に、バードギール文化が広がっていたわけではない。これは乾燥した地域・酷暑の地域に向いた建築であるため、イラン中央〜南部、そしてペルシア湾岸地域でのみ見ることができる。対して、首都テヘランやカスピ海沿岸のような、北部の街では見られない。

湾岸に住んでいた部族の一部が、海を渡って現在のドバイ(UAE)やバーレーンに移り住んだ際、この技術をそれぞれの地域へ持ち込んだ。こうしてイランで生まれたバードギールの技術は、湾岸諸国へと伝わっていった。

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(ドバイにあるバードギールのレプリカ。筆者撮影)

ドバイには、昔ながらの街並みを再現した観光地がいくつかあり、「バスタキヤ地区」もその1つ。ドバイ旅行では必ずルートに組み込まれる場所なので、行ったことがある方もいらっしゃるだろう。そこでは再現されたバードギールを見ることができる。

尚、このバスタキヤ地区は、ペルシア湾岸のイラン側、バスタック(地名)から人々が移り住んだことが、その地名の由来となっている。

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(ドバイ、バスタキヤ地区で再現されたバードギール。筆者撮影)

ちなみに、以下の「バードギール風」の建物の正体は何かお分かりだろうか。

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(筆者撮影)

これは、地下鉄駅へと繋がるエレベーターである。周囲の景観に馴染むよう、バードギール風のデザインにしてあるのだ。バードギール風なのはもちろん外見だけであり、中は普通にエレベーター。風ではなく人間を地下へと運んでいる。

モチーフとなったバードギール

やがて電気が誕生し、エアコンが開発され、現役の天然エアコン・バードギールは減少していったが、その特徴的なデザインは、この地域の建築物の象徴として残った。

現在のドバイでは、デザインとして建物の上にバードギール風の装飾を乗せ、エキゾチックな雰囲気を演出することが多々ある。もちろん中に穴は通っておらず、ただの「お飾り」なのだが、近代的な建築物が立ち並ぶドバイの中で、旅情を演出することに一役買っている。

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(ドバイの高級リゾート、マディナジュメイラの上にもバードギール風の装飾が。筆者撮影)

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(マディナ・ジュメイラ。筆者撮影)

徹底対策!暑さに強い街づくり

さて、現代の話に移ろう。バードギールではなくエアコンがフル稼働している現在。屋外は当然暑いわけだが、それでも人々が活動できるよう、暑さに強い街づくりがされている。

どのようなことがされているのか、紹介したい。

(1)外に出る時間を最小限にする構造。

たとえば、駅と主要な商業施設は通路で直結している。ただの渡り廊下ではなく、きちんと密閉されてエアコンがついた通路だ。1キロ以上の長さがあることも多々。

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(メトロ駅とショッピングモールを繋ぐ空中通路。中はエアコンが効いている。筆者撮影)

(2)駐車場は地下がベスト。

外を歩く時間を最小限にするためには、駐車場の位置も大切だ。

ベストな位置は、「地下や屋内」。

次点が「屋根アリの屋外」。

その次が「屋根ナシの屋外」。

残念賞が「そこらへんの砂漠に停めておいて」である。

ある程度きちんとした商業施設ならば、以下の写真のような地下駐車場が設けられており、駐車場から施設内まで、直射日光や熱風に当たることなく移動ができるようになっている。

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(駐車場は地下に。筆者撮影)

居住用アパートでも同じことが言える。「カバード・パーキング付き」という条件が、良い物件のアピールポイントのひとつとなっている。

(3)駅は空調完備の屋内空間。

駅のホームも、野ざらし雨ざらし熱風ざらし、なんてことはない。エアコン完備の空間である。

電車が来たときだけホームドアが開き、隙間からちょっぴり熱風が吹き込むが、それ以外はきっちり閉じている。待っている間に汗だくになることはない。

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(ドバイメトロの駅。筆者撮影)

(4)屋外風の施設を、屋内に作る。

例えば、以下の写真は昔ながらの市場(スーク)風の建物に見えるが、実は天井はガラス張り。エアコンが効いた屋内施設だ。

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(屋内スーク。筆者撮影)

また、ドバイは遊園地すら屋内にある。屋外型の遊園地は、冬季限定営業である。

ドバイは暑い。暑いことを前提として、街を作っているから、人間が生活できている。

日本も、毎年毎年「今年は暑い」と言ってばかりでは埒が明かないことだろう。もうこれから毎年ずっと暑いのだから、暑いことを前提に、暑くても社会生活が回せるように、仕組み自体を整えてしまった方が、きっと生産的なのではないだろうか。

※「砂漠」と「沙漠」

サラサラの砂粒で構成される地を「砂漠」。土の大地がそのまま乾燥して干からびたものを、水が少ないと書いて「沙漠」と表記した。「沙漠」の方は、「土漠」と呼ぶ人もいる。

 

Profile

著者プロフィール
Mona

アラブ首長国連邦ドバイ在住。東京外国語大学卒業後、日系ベンチャー、日系総合商社を経て、湾岸系資本の現地商社に勤務する。その傍ら、ブロガーとしてドバイ現地情報や中東ビジネス小話を発信中。

ブログ「どうもヒールが砂漠に刺さる」

Twitter:@Monataro_DXB

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