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ドバイ像の砂上点描

Mona|UAE

ドバイとアブダビ、国を分断するコロナ対策

(RapidEye-iStock.)

第二波到来中のUAE

UAEは現在、感染第二波が到来中である。

5月に994人が記録されたのをピークに、6月には一旦300人台まで減っていた新規感染者数は、7月7日のドバイ観光客受入再開からしばらくして後、再び増加し始めた。9月23日には、UAE国内で過去最多となる1,083人の新規感染者が報告され、注意喚起や罰金の周知が改めて強化されている。この期に及んで一体どこでそんな数が見つかっているのか、という気分であるが、報道によれば「海外からの渡航者、及びその接触者が主」とのことだ。

新規感染者数を示すグラフは今、きれいな「N」の字を描いている。

そんな状況に対し、現在どのような手が打たれているのか。その対応は、同じUAE国内でありながら、ドバイとアブダビではまるで別の国であるかのように異なる。ざっくり言うと、ドバイは比較的緩く、アブダビは厳しい。その差異について紹介したい。

アブダビ.jpg

(アブダビの風景:EXTREME-PHOTOGRAPHER-iStock.)

ドバイ-アブダビ間の移動制限

同じ国内でありながら、ドバイとアブダビの間には移動制限がある。

アブダビからドバイなど他首長国へ出ていくのは自由だ。しかし逆方向は大変で、アブダビへ入るには48時間以内に発行されたPCR検査またはDPI検査(※)の陰性証明を提出しなくてはいけない。アブダビと各地方を繋ぐ道路の、アブダビ行き車線に「関所」が設けられており、そこでIDと陰性証明を確認される。

無事に通過できても更に、アブダビ入り後6日目にPCR検査が義務付けられている、という念の入りようだ。国内の移動とは思えないような厳しさである。

※DPI検査:Diffractive Phase Interferometry(回折フェーズ干渉法)の略。血液を検体とするレーザー検査で、PCR検査よりも安価でスピーディー。わずか5分で結果が出る。抗体検査とも別物。

先般、たまたまアブダビ在住の友人が週末を利用してドバイへやって来た。

現在、二首長国間にはバスすら通っていないため、1時間半もの距離をタクシーに乗ってきたという。久々の再会を喜ぶのもそこそこに、さっそく連れていったのが、帰路に備えるためのスクリーニング・センターである。ドライブスルー形式の検査場だ。そこで陰性証明を取得して、その後48時間以内に「関所」を突破しなくては、彼女はアブダビの自宅へ帰られないということだ。(そして6日後にはPCR検査が待っている)

今回ここで彼女が受けたのはDPI検査。助手席に彼女を乗せ、私は運転席から眺めていたのだが、あれよあれよという間に終わってしまった。その様子は以下の通り。

UAE入国時の違い

海外からUAEへ入国する際の条件も、ドバイとアブダビで異なる。UAEへ入国するには、基本的にはドバイもしくはアブダビの空港を利用することになるが、どちらへ到着するかによって、求められるものが全く別なのだ。

■ドバイから入国の場合■

出発前96時間以内のPCR検査の陰性証明書の携行が求められている。また、陰性証明書を持っていたとしても、サーモスクリーニングに引っかかるなど疑わしい場合は各種検査が実施され、陽性と判明した場合、14日間の隔離となる。その他、保険の加入や専用アプリのダウンロードも義務だ。

■アブダビから入国の場合■

アブダビはドバイより厳しく、ドバイの条件に加えて全員14日間の隔離が義務である。観光客・在住者・自国民、陰性・陽性を問わず、全員が対象だ。しかも、隔離期間中はGPS機能つきの取り外し不可能なリストバンドを身につけなくてはいけない。出歩くとGPSで把握され、なんと50,000AED(約150万円)の罰金刑だ。

■ドバイ入国→アブダビへ移動する場合■

アブダビ以外の空港からUAEへ入国し、その後アブダビへ国内移動する場合は、「14から他首長国での滞在日数を引いた日数」だけ、隔離が求められる。例えば、ドバイの空港から入国し、ドバイで5日間を過ごし、その後アブダビへ移動するならば、「14-5=9」。アブダビ入りの際に9日間の隔離が必要ということだ。

いずれにせよ、UAEに到着してから2週間はアブダビ市内を歩けない。

パスポートを持つ女性.jpg

(structuresxx-iStock.)

ちなみに、こういった対応をしても尚、新規感染者の内訳が「海外からの渡航者」である理由は、出発地で受けた検査の精度に原因がある可能性がある。UAEは、周辺の新興国からの出稼ぎ渡航者が多い。そういった国々での検査の精度には少々不安がある。実際、最近、インドのいくつかの検査施設が名指しされ、そこで発行された陰性証明書が無効となり、数百人のインド人がUAE入国を拒否されてしまった。

異なる「守りたいもの」

同じ国内でありながら、ドバイとアブダビで対応にこれだけ差異があるのはきっと、それぞれにとって守りたいものが異なるからなのであろう。

経済都市であるドバイ。

資源と首都機能をもつアブダビ。

過去最大の感染者数を記録しても尚、ドバイは再度ロックダウンや空路封鎖をする気配はないし、それを求める声もない。資源のないこの首長国は、諸外国からのヒト・モノ・カネが交差しないと、その機能を活かすことができずジリ貧となる。

対するアブダビは、(民はともかく)官には資源による収入があり、首長国としてはまだ持ち堪えることができる。首都として政治機能に支障をきたす訳にはいかないということで、より慎重なのかもしれない。第二波が到来しようともそのドアを開け続けるドバイをどのように見つめているのだろうか。

ドバイにとってアブダビは、たかだか車で1時間半の距離にある「隣町」なのだが、近くて遠い存在になってしまった。気軽に往来できる日はまだ遠いようだ。

 

Profile

著者プロフィール
Mona

アラブ首長国連邦ドバイ在住。東京外国語大学卒業後、日系ベンチャー、日系総合商社を経て、湾岸系資本の現地商社に勤務する。その傍ら、ブロガーとしてドバイ現地情報や中東ビジネス小話を発信中。

ブログ「どうもヒールが砂漠に刺さる」

Twitter:@Monataro_DXB

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