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スペインあれこれつまみ食い

松尾彩香|スペイン

サンタがいないクリスマス スペインではどう過ごす?

©️iStock - Oleksandr Yakoniuk

もう1月に入ったのにクリスマスの話題?と思われるかもしれませんが、スペインではクリスマスは12月24日から始まり1月6日に本番を迎えるという長い長いイベントです。最終日6日はイエス・キリストが生まれた知らせを聞きつけた3人の博士が贈り物を持ってイエスを尋ねた日とされており、スペインの子供たちはこの日にクリスマスプレゼントをもらうのです。今回は日本とは一味違うスペインのクリスマスを紹介したいと思います。

 

クリスマスは12月24日の昼からスタート

お昼ご飯の前に軽くお酒を飲みながらポテトチップスやオリーブをつまむことをスペインでは「ベルムー(Vermut)」と呼びますが、クリスマスイブは街全体で大規模なベルムーが行われます。町中至るところに大きなスピーカーが並び爆音で音楽がかかっている中、スペイン人たちは友人とバーに繰り出しお酒を買い、好みの音楽が流れているスピーカーの前で音楽を楽しみながらお酒を飲みます。また路上でオーケストラたちがチャランガと呼ばれる軽快な音楽を演奏していたりと、まるでフェスのような雰囲気でクリスマスはスタートするのです。スペインらしいと思ったところはこんな騒がしいベルムーに出かけるのが若者だけではないということ。年配の方も若者に混じってお酒を楽しみますし、ベビーカーに乗った赤ちゃんや子供ですらも親のベルムーに同席したりと、スペイン人全員がこのお祭りムードを楽しんでいました。

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ベルムーに繰り出す人々(筆者撮影) 

ベルムーは日が沈む頃に終了。一旦家に帰ってひと休みし、夜に家族や親戚で集まって夕食を囲みます。日本のようにフライドチキンやクリスマスケーキを食べる習慣はなく、クリスマス特有の料理は特にありません。夕食が落ち着いたらシャンパンを開け、ビジャンシーコと呼ばれるスペイン版のクリスマスソングを歌って家族団欒の食卓を楽しんだ後は、再び街に繰り出し友人と飲み屋やクラブで朝方まで過ごしたり、信仰深い人は25日の午前0時に行われるキリスト誕生を祝うミサに参加します。翌日25日はどこのお店も大抵閉まっているので午前中は前日の疲れをとり、再び昼に家族で集まって昼食をとって一家団欒の時間を楽しむのです。

 

まだまだ終わらないクリスマス

日本では25日が終わればお正月ムードに変わりますが、スペインの街は依然としてクリスマスムード。25日のクリスマスの雰囲気を引きずったまま年明けのカウントダウンで再び家族が集まり、翌日の元旦を再び家族で過ごしたあとは息をつく暇もなくクリスマス最終日である6日の「東方の三博士の礼拝」の日を迎えます。スペインでは多くの家庭でプレゼントを持ってくるのはサンタクロースではなくこの東方の三博士だと考えられているので、クリスマスプレゼントの開封は一般的にこの日に行われるのです。また、子供やカップルだけでなく家族間でもクリスマスプレゼントを贈り合う習慣があるため、6日を間近に控えた年末年始はどこに行ってもクリスマスプレゼントを買い求める人でいっぱい。年末に首都マドリードを訪れましたが平日の昼間だったのにも関わらず中心地は人がすれ違うのがやっとのほどで、帰る頃にはクッタクタになってしまいました。

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年末、平日のマドリード(筆者撮影)

 

スペインの子供達にプレゼントを持ってくる東方の三博士の正体は?

日本ではあまり聴き慣れない東方の三博士。この3人の博士は新約聖書に登場します。彼らは占星術師でイエス・キリストが生まれた時に「ユダヤ人の王が生まれた」という星の知らせを受けてラクダに乗って旅を始め、星に導かれて1月6日にキリストがいるベツレヘムに到着したとされています。この時に博士が見た星は「ベツレヘムの星」とも呼ばれ、クリスマスツリーのてっぺんに飾る星はこのベツレヘムの星を意味しているんだそうです。この博士たちは乳香、没薬、黄金を贈り物として持参したということで、このエピソードがベースとなって現在スペインで子供たちにクリスマスプレゼントを持ってくるのはこの3人の博士ということになっています。ちなみに悪い子にはプレゼントではなく炭が贈られるんだとか。子供達はプレゼントの中身が炭でない事を祈りながら包紙を開けているんだと思うと、なんだか微笑ましいですね。

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右からメルチョール(ヨーロッパ系)、ガスパール(中東系)、バルタサール(アフリカ系)©️iStock - ZvonimirAtleti

さらに1月6日の前夜には「三博士たちがプレゼントを配るために街にやってきた」という演出をするためにスペイン全国至る所でこの三博士たちのパレードが行われます。数年前までは聖書を忠実に再現するために三博士たちが本物のらくだに乗って登場したりヤギやゾウがパレードを行進していたようですが、近年動物愛護の観点から本物の動物は使用せず、代わりに電気で動くモーターを使用した台車や人形を使用する自治体が増えているんだそう。パレードではキャンディなどのお菓子がたくさん撒かれるので子供たちはビニール袋を持って参加し、こちらに向かって投げてもらえるように一生懸命アピールするのです。(ちなみに私はキャンディ5個しかゲットできませんでした)

以下の動画は首都マドリードで行われた東方の三博士のパレードの様子。余談ですが大人たちの間では今年のマドリードのガスパールがイケメンだと話題になっているそうですよ。

 

まるでロシアンルーレット?ロスコン・デ・レジェス

先ほどスペインにクリスマスケーキはないという話をしましたが、クリスマス期間に食べられるお菓子はいくつかあります。その中で代表的なのはロスコン・デ・レジェス。リング状の菓子パンのような食べ物で、オレンジピールが入っているので柑橘系の味がします。ロスコンは1月6日のクリスマス最終日に家族分け合って食べるのですが、実はパンの中に東方の三博士の小さなフィギュアと乾燥そら豆が1つずつ入っているという仕掛けがされています。自分に切り分けられたロスコンの中にフィギュアが入っていた人は幸運が訪れると言われており、そら豆が中に入っていた人はそのロスコンの代金を支払わなくてはいけないというのですから、食べる時は少しドキドキしてしまいます。ちょっとしたゲーム感覚が味わえる、楽しいスペイン版クリスマスケーキといった所でしょうか。

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©️iStock - nito100

 

日本のクリスマス文化がCMに?

日本では70年代ごろからクリスマスにはケンタッキーのフライドチキンを食べるという習慣が根付いていますが、今年スペインのケンタッキーはこれに肖ったキャンペーンを行いました。その名も「los OTAKU」

CMでは「なぜ日本人はクリスマスにケンタッキーのチキンを食べるのか?」という疑問が投げかけられ、それについて日本人が次々と日本語で回答していきます。字幕などはつかないことから、ナレーションが「うーん・・・君たちが今年のクリスマスにオタクセットを食べるとその訳がよく分かるよ!」と締めくくるというもの。オタクチキンには照り焼きソースが使用されており、これはスペイン人にもなかなか好評のようです。

 

さて。長かったクリスマスが終わったということは、冬のバケーションが終わってしまったということ。スペイン人たちは仕事や学校など、重い腰を持ち上げて今までの生活に戻っていきました。師走という言葉通りバタバタ慌ただしく過ぎていった年末。タフなスペイン人について行けず心身ともにクタクタになってしまったクリスマスでした。次の行事まではしばらく時間があるのでそれまでゆっくり過ごそうと思います・・・・。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。

Twitter: @maon_maon_maon

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