World Voice

イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

イタリア復活祭2023 大半が家で家族と、伝統重視・物価高の影響も 

プレッジョで4年ぶりに開催された聖なる棘祭りで、大きな卵型チョコレートに群がる人々 2023/4/11 photo: Naoko Ishii

 復活祭は、十字架に架けられて死を遂げたイエス・キリストの復活を祝うキリスト教の重要な祝祭日で、今年はカトリック教会では4月9日に祝いました。我が家では、2020年はイタリア全土ロックダウン、2021年は移動規制のために、大家族皆で集まることができなかったものの、例年は朝、教会のミサに参列したあと、大家族で昼食を共にして、復活祭を祝っています。

 一方、今年の復活祭のイタリア人の過ごし方はどうかと言うと、The Trade Deskの調査によると、回答したイタリア人の82%が自宅で、あるいは家族と過ごすと答えていて、家族と復活祭を祝うのは58%という結果が出たヨーロッパの平均よりも割合が高くなっています。

 こうしてイタリア人の大半が復活祭を家族と祝うのは、イタリアにはカトリック教徒が多く、イタリア人が従来家族を大切にするためだろうとわたしは考えていて、実際にうちを始めとしてそういう家庭も多いと思うのですが、上の記事によると、ロシアのウクライナ侵攻による物価の高騰の影響も大きいとのことです。

 イタリアの人口は約5885万人なのですが、Codaconsは復活祭前の調査で、まだ感染下にあった去年の復活祭休暇には1400万人が旅行をしたのに、今年は1150万人に減少していることから、今年は250万人のイタリア人が、物価高のために旅行をあきらめて家で過ごすことにしたと推測しています。

 Istatの最新データによると、去年に比べて今年は、航空代金は国内線が71.5%増、国際線が59%増、パッケージ旅行費用が14.7%増、ホテル宿泊費が13.3%増、夕食の外食の平均金額が7.3%増となっているとのことです。

 この物価の高騰のために、昨年の復活祭では、旅行をしたイタリア人のうち10.5%が海外への旅行を選んだのに対し、今年は海外旅行をするのは4パーセントで、残る95%の旅行者は旅費を抑えるために国内に残ることにしたと推測されています。復活祭休暇の一人当たりの旅行費用は、旅行先がイタリア国内である場合は、昨年が474ユーロ、今年は521ユーロで9.9%増、海外への旅行である場合には、平均費用が昨年は708ユーロ、今年は792ユーロで11.9%増といずれも高くなっているのですが、こんなふうに旅費が高くなっても、平均宿泊日数は昨年の4.7泊から減少して、今年は3.6泊となっています。

 一方、イタリアのホテル連合協会、Federalberghiの調査結果によると、21.4%のイタリア人が復活祭休暇に旅行をする目的は「帰省」と答えていますから、旅行する人の5分の1は、復活祭を家族と過ごすために里帰りをする人です。

 復活祭という主要な祝祭日は、家族と祝うことはもちろん、暮らす地域の教区教会の人たちと共に祝うことも大切です。ウンブリア州の北にある小さな村、プレッジョの教会には、受難に遭ったイエス・キリストがかぶせられたイバラの冠の棘、聖なる棘が、聖遺物として厳重に保管されているのですが、例年、復活祭の2日後の火曜日には、その聖なる棘を祝う祭りが復活祭の祝いの一環として盛大に行われます。

 プレッジョの聖なる棘祭りは、ミサに続いて、聖なる棘に従い村の小路や道を歩いての行進、そして、村人たちが準備した復活祭のパンやケーキなどの食事会、大きなチョコレート卵のくじ引き・抽選会があり、義父母も若い頃から何度も参加したことのある伝統のあるお祭りです。大勢が参加し、いっしょに食事をする慣習があるために、感染下になってからずっと中止されていた祭りが、今年は4年ぶりに開催され、大勢の村人たちが熱心に行事に取り組む姿、そして久しぶりにこうして大切な祭りを集って開催できることを喜ぶ姿を見て、感慨深かったです。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ