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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

女性の視点でとらえた女性の魅力を社会に、女性写真展に俳句で参加

Photographs by Anastasia Trofimova, L’età della felicità 2019/11/10 photo: Naoko Ishii 

 イタリアでもまだ、マスメディアやドラマ、映画、雑誌など、さまざまな場面で伝えられる女性像が、得てして、男性の視点でとらえられた、男性が見たい、伝えたい女性像でありがちな傾向があります。わたしがイタリアに暮らす19年の間に、少しずつ改善されてきてはいるものの、今でもまだ、たとえばニュースキャスターやクイズ番組のレギュラー出演者を見て、男性は経験や能力から採用されているのに、女性ばかりが若さや容姿にも重点を置いて採用されている傾向があるように思います。

 そんな中、女性の写真家が女性を主題とし、女性を撮影した写真に、女性が詩を添えた展覧会を通して、女性の視点でとらえた女性像を社会に伝えていこうという写真展、「Donna vede Donna」(女が見る女)に、俳句で参加しないかという誘いを受けたのは、2019年の夏のことです。

 女性への暴力をなくすためにも、特に若い世代に、女性がとらえた女性の美しさや優しさ、すばらしさを伝えていきたいという目的に賛同し、すぐに参加を決めました。発起人のマルコ・パレーティと、共に展覧会の運営を担当する写真家、ステーファノ・ファージは男性ですが、その二人の支えのもと、女性の写真家や詩人と集まりや話し合いを重ね、わたしは、二人の写真家、アントネッラ・ピゼッリとアントネッラ・マルツァーノのそれぞれ5枚の写真に添える俳句を担当することになりました。

 アントネッラ・ピゼッリの写真は、女性に内在する神性を主題とし、モデルの女性を、宇宙を構成する五大元素、土、水、空気、火、木を体現するトラジメーノ湖の精に見立てて、表現しています。

 初めて作品の構想を聞いたとき、「元始、女性は実に太陽であった」に始まる女性解放運動の先駆者、平塚らいちょうの言葉や精神と重なるものを感じ、共鳴しました。

 アントネッラ・マルツァーノは、作品を通して、年を経て変わりゆく母と娘の関係を描き、二人の愛情や安心感、親密さを表現しています。それぞれの写真ごとに、表情や二人の位置、視線の向く方向、背景となるトラジメーノ湖などが異なっていて、母と娘の心やその時々の関係などが伝わってくるように思います。 

 冒頭の写真は、アナスタージア・トロフィモーヴァの「幸せの歳」で、さまざまな年代の女性が幸せにほほえむ姿を通して、日々のさささやかなできごとにも喜びを見出せる女性の特質を伝え、その喜びを、写真を通して見る人の心にも広げていこうとしています。

 他にも、すばらしい写真や詩が多数展示されていました。参加する写真家・詩人の大半はイタリア人ですが、日本のわたしが参加しているほか、ロシアやアルバニアの女性たちも参加しています。

 この写真展はその後、昨年2月にはウンブリア伝統の陶器の町、デルータ、次いでペルージャでも開催され、現在は、新型コロナウイルス感染拡大のために中断していますが、今後も、ウンブリアの市町村だけではなく、イタリアの他の州、そしてロシアでの開催が予定されています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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