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ひきりん|ベルギー

「ポスト・メルケル」ドイツの次期リーダー候補者たち

人気のないラシェット新党首、ポスト・メルケルは流動的

2年前にメルケルからクランプ=カレンバウアーへのバトンタッチに失敗したCDU。では、今回の新たな党首ラシェットはどうかと言うと、こちらも党内基盤、国民からの支持ともに旗色が悪い。

先般の1月の党首選を振り返ってみよう。

名乗りを上げたのは3名。外交に精通したノルベルト・レトゲン元環境相、メルケルの永遠のライバルと言われるフリードリヒ・メルツ元下院院内総務、そしてメルケルの側近アルミン・ラシェット州首相が争った。

レトゲン_メルツ_ラシェット.jpg

1回目の投票では、レトゲンが224票獲得するも脱落。最大得票385票を獲得したメルケル路線からの転換を訴える保守派メルツが首位で、メルケル路線継承のラシェットは380票にとどまっていた。続く決選投票で、ラシェット521票 対 メルツ466票と逆転で下し、辛うじて党首に選ばれた格好だ

メルツに一定の票が集まったのは、より右派のポピュリスト政党に流れたCDU保守層の支持回復への期待からだった。前回の総選挙時、メルケルの難民受け入れ姿勢に背を向けたCDU支持者内の保守層が、受け入れ反対の旗幟を鮮明にし、ナショナリスティックな主張を全面に押し出して支持を伸ばした右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)に相当数流れた。保守回帰が叫ばれるのは、元々CDUに投票してきた有権者が、難民の大量受け入れなどリベラル路線に大きく傾いたメルケル政権に Nein!(No!)を突きつけたかたちとなっていたからだ。

前々回2014年の総選挙では得票率4.7%で、5%を超えられずに議席を獲得できなかった「ドイツのための選択肢」(AfD)が、前回17年は得票率12.6%と3倍近くに伸ばし、国政で初めて獲得した議席がいきなり94議席(全709議席)に達しての大躍進。更に、同じく前々回0議席から80議席と大幅増で連邦議会に返り咲いた新自由主義的な中道右派の自由民主党(FDP)もCDUの票を奪った。

実際、事前のCDU支持者に対する世論調査でもメルツがリードしていた。反メルケルの急先鋒メルツはメルケルが首相の座に着く前からのライバル。前回2018年12月の党首選でも反メルケルの旗幟を鮮明にしたが、僅差ながらクランプ=カレンバウアーに負け、今回も連続して敗北。これにより党首の座を射止められなかっただけでなく、次の首相候補からも大きく後退したのは明らかだ。

そんな決定的な勝利での党首選びに結び付かなかった結果を踏まえ、党首と首相候補は別の人物で良いという声が党内の重鎮も含め公然と上がっており、ラシェット新党首は短期に指導力を発揮して党内をまとめることができなければ、別の首相候補の選定が本格的に始まることになりそうだ。

Profile

著者プロフィール
ひきりん

ブリュッセル在住ライター。1997年ドイツに渡り海外生活スタート、女性との同棲生活中にゲイであることを自覚、カミングアウトの末に3年間の関係にピリオドを打つ。一旦帰国するも10ヶ月足らずでベルギーへ。2011年に現在の相方と出逢い、15年シビル・ユニオンを経て、18年に同性婚し夫夫(ふうふ)生活を営み中。

ブログ:ヨーロッパ発 日欧ミドルGAYカップルのツレ連れ日記 

Twitter:@hiquirin

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