日本人の国際結婚は、もう珍しくない。直接知っている人がいなくても、知り合いの知り合いや、遠縁まで探せば1組くらいは見つかるだろう。

 日本人男性とアジア系の女性との結婚もよくあるが、日本での「国際結婚」のステレオタイプと言えば、日本人女性と白人男性の組み合わせではないだろうか?

 ところが、ボストングローブ紙が注目の一冊として取り上げるほどアメリカで話題になっている『The Good Shufu: Finding Love, Self, and Home on the Far Side of the World』は、そんな日本の「国際結婚」のイメージをくつがえす本だ。

 著者は、ボストン郊外の裕福な家庭で育った白人女性Tracy Slater。

 ユダヤ系の教育熱心な家庭で育ったTracyは、男性に頼らず自立している自分を誇りにしてきた。大学で教鞭を取るかたわら、囚人相手の文章教室でボランティアの講師を務め、ボストン周辺の作家がファンと触れ合う文芸サークル「Four Stories」を立ち上げ、多くの友人に囲まれて充実した生活を送っていた。

 とりたてて外国に興味はなかったし、エキゾチックな恋に憧れたこともない。結婚相手としてのスペックが揃っていて、母親を喜ばせるような高学歴、高収入のユダヤ系白人男性と付き合ったことはあるが、結婚したいほどの情熱を抱けずに30代になってしまった。

 それでも焦りなど感じていなかったTracyが、あろうことか、英語がそれほど達者ではない日本人男性と恋に落ちてしまった。そして2国間を行き来する長距離恋愛の末に、Tracy自身が日本語もろくに話せないのに、大阪で「主婦」になってしまったというのだ。

 これが小説なら、「現実味がない」と却下されそうな筋書きだ。

 と言うのは、ふつうの国際結婚の場合、一方が相手の言語や文化に興味を抱いているか、少なくともある程度の理解をしているものだ。

 このTracyとToruのケースは違う。Tracyは小遣い稼ぎのためにビジネススクール留学中のアジア人ビジネスマンに英会話を教える短期の仕事を引き受けただけだし、Toruの場合は会社の命令でボストンに派遣留学したにすぎない。どちらも相手の言語や文化には興味すら抱いていなかった。

 2人の運命を変えたのは、突然空から降ってきたような理屈抜きの「恋」である。