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シリアで勢力拡大する反中テロ──ウイグル独立派武装組織の危険な進化
シリア暫定政府への統合
アサド政権の崩壊後、TIPはHTSが主導する暫定政府の軍事構造に組み込まれつつある。一部のメンバーはシリア国防省の職員として雇用され、ダマスカス、ハマ、タルツースに配置されている。これにより、TIPはシリア社会に一定程度溶け込み、活動基盤を強化している。
しかし、メンバーの中にはアルカイダに近い過激なイデオロギーを保持しており、暫定政府の統制が及ばない場合、さらなる不安定化を招く可能性がある。
宗派間暴力への関与
2025年3月以降、シリア沿海部のラタキアやタルツースで宗派間対立に起因する暴力事件が頻発した。TIPは、HTS傘下の他の武装勢力(レッドバンド、シャヒーン旅団、スルタン・スレイマン・シャー師団など)やアルカイダ系のフッラース・アルディン(HAD)と共同で、アラウィー派を標的とした攻撃や民間人の大量逮捕に関与した。
これらの事件により、1000人以上の死傷者が出る惨事となったが、TIPの関与は宗派対立を利用して地域での影響力を拡大しようとする戦略を示している。
新疆ウイグルへの「ジハード」戦略と組織の再編
2025年3月、TIPは新たな戦略計画および規約を発表し、組織名を「東トルキスタン・イスラム党(ETIM)」に改称した。この改称は、新疆でのジハードを強化し、「武力による独立」を目指す明確な意図を反映している。指導者のアブドゥル・ハクは、海外のウイグル人コミュニティに対し、新疆ウイグルでの行動を扇動するメッセージを発信している。
この戦略は、シリアのHTSの成功やアフガニスタンのタリバンの事例に触発されたものであり、新疆ウイグルにおける活動再活性化を企図している。
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