コラム

シリアで勢力拡大する反中テロ──ウイグル独立派武装組織の危険な進化

2025年08月12日(火)09時52分
中国を敵視するシリアにおける「トルキスタン・イスラム党(TIP)」の最新動向

Getmilitaryphotos -shutterstock-

<新疆ウイグル自治区の独立を掲げる過激派組織「東トルキスタン・イスラム党(Turkistan Islamic Party; TIP)」が、シリア内戦の混乱を利用して影響力を急拡大している>

TIPは、新疆ウイグル自治区の中国からの独立を掲げ、国際的なテロ組織として国連安保理の制裁対象に指定されている。しかし、シリア内戦やアサド政権の崩壊など背景に、TIPは新たな戦略を展開し、地域および国際社会に影響を及ぼしている。

TIPの概要

TIPは、新疆ウイグル自治区の独立を目標とするウイグル人を中心とした武装組織である。アルカイダとの関連が深く、国連安全保障理事会の決議1267(1999)に基づく制裁リストに指定されている。2011年のシリア内戦開始以降、シリア北部を中心に活動を展開し、反政府勢力として戦闘に参加してきた。


2024年12月のアサド政権崩壊後、ハヤト・タハリール・シャーム(HTS)が主導する暫定政府の連合に参加し、影響力を拡大している。

TIPの主な目的は、新疆での「ジハード(聖戦)」を通じて独立を実現することである。シリアの混乱した状況を活用し、戦闘員の訓練、資金調達、国際的なネットワーク構築を進めている。今日、TIPはダマスカス、ハマ、タルツースにメンバーを配置し、HTSの支援を受けて活動を継続している。

最近の活動状況 軍事訓練の実施

2025年2月、TIPはシリアのラタキアにおいて海上戦闘技術の訓練を実施した。この訓練には、スピードボートを用いた攻撃、海上救助、武装した水泳および潜水技術が含まれており、複雑な戦場環境での生存能力向上を目指している。

これらの高度な訓練は、HTSの後援がなければ実現が困難であり、TIPが暫定政府と密接に協力していることを示している。海上戦闘能力の強化は、陸上戦闘に加え、多様な戦場環境への対応力を高める戦略の一環である。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア軍、ウクライナ東部で突如攻勢 米ロ会談前に占

ビジネス

英政府、経営難の水道会社巡り助言契約と関係筋 特別

ワールド

ガザ市攻撃で11人死亡、南部にも空爆 増える餓死者

ビジネス

アングル:最高値の日本株、株高持続の見方 米株や国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story