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アサド後の「真空地帯」──ISとアルカイダが舞い戻るシリアの現実
アサド政権崩壊後、暫定大統領アフマド・アル・シャラア率いるハヤト・タハリール・シャーム(HTS)がシリアの政治・軍事の中枢を握った。HTSはかつてアルカイダのシリア支部であったアル・ヌスラの後継組織であり、23人の閣僚のうち9人がHTSと直接的または間接的に関連しているという。
特に外務、国防、内務、司法といった主要省庁のトップがHTS系人物で占められている点は、統治の方向性に大きな影響を与えている。
しかし、HTSの指導者であるシャラアや内務大臣アナス・ハッタブは実務派とされる一方で、下部組織の戦闘員には過激なイデオロギーを保持する者が多い。これが、統治の統一性や安定性を損なう要因となっている。
特に、2025年3月にシリア沿岸部で発生した宗派間暴力や虐殺事件には、HTS関連グループ、トルコが支援するシリア国民軍(SNA)、そしてアルカイダ系のフッラース・アル・ディンが関与したとされ、統治の困難さを浮き彫りにしている。
外国戦闘員の統合と新たなリスク
今日、シリアに存在する外国人戦闘員が5000人以上いるとも言われ、特に中央アジア出身の戦闘員が暫定政府の方針に不満を抱き、独自の行動を取る可能性がある点だ。
注目すべきは、トランプ政権が外国戦闘員のシリア軍への統合について。例えば、アルカイダと関連のあるウイグル系武装組織「トルキスタン・イスラム党(TIP)」が、暫定政権下のシリア軍に組み込まれた。
しかし、暫定政府はすべての派閥を完全に掌握できておらず、過激派思想を持つグループが依然として独立して活動している。
こうしたグループの中には、カティバト・アル・タウヒド・ワル・ジハード(Katibat al-Tawhid wal-Jihad)」、「アジナド・アル・カウカズ(Ajnad al-Kawkaz)」「カティバド・アル・ゴラバ・アル・ファランシヤ(Katibat al-Ghoraba al-Faransiya)」などがある。
これらの組織は、アルカイダ系グループと物流や情報を共有しており、シリア国内だけでなくアフガニスタン、アフリカ、イエメンへの移動を模索しているとされる。この国際的なネットワークの拡大は、シリアを越えたテロの脅威を増大させる要因だ。