コラム

世界の日本愛を失うリスク......私が漫画のAI翻訳に反対する理由

2026年01月15日(木)19時39分
西村カリン(ジャーナリスト)

STANISLAV KOGIKUーSOPA IMAGESーZUMAーREUTERS

<日本の漫画の輸出促進に向け、生成AIを使った多言語の翻訳を政府は後押ししているが......>

2024年頃から、日本の漫画の多言語翻訳に関する報道が多くなった。日本の文化が多くの国々に届くのはとてもよい動きだと思う。しかし、海賊版が大きな課題だ。

一般社団法人ABJの調査によると25年6月時点で、日本の出版物の海賊版をオンラインで読めるウェブサイトは749件。そのうち103件は日本語だが、英語が半分以上の割合を占める。日本漫画の第2の市場であるフランス語のものは8件だ。


文化庁はこうした海賊版の影響を小さくし、日本の漫画の輸出を推進するには翻訳の正式版をより早く出さないといけないという結論に達した。論理的に賛成できる考え方だ。

ただ、日本語を勉強した外国人記者として、推進されている方法が問題だと思う。現在、日本政府が後押ししようとしているのは生成AIを使った多言語の翻訳だからだ。複数の日本のスタートアップ企業が、日本語の漫画を短時間で多言語に翻訳するための生成AIモデルを開発している。

漫画に特化したAI翻訳技術の研究開発を行うMantra(マントラ)社は24年6月時点で、「従来の翻訳ワークフローを半分以下に圧縮し、月間延べ10万ページ(単行本換算で約500冊分)を翻訳できる」と発表。現在は月間20万ページに達している。

「15年間にわたる漫画翻訳の経験がある私にとって、大変悲しい話だ」とベテランのフランス人翻訳者は受け止めている。「いいえ、心配しないで。人間による作業が完全になくなったわけではないから」と出版社の担当者は反論するが、今まで漫画翻訳の専門性を一生懸命に磨いてきた外国人の若者は、非常に心配しながらがっかりしているのが現実だ。

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