コラム

スケベ心を抑える、写真は撮らない... 中国で拘束されないための注意点

2023年04月20日(木)19時20分
周 来友(しゅう・らいゆう)(経営者、ジャーナリスト)
拘束

CHINAFACE/ISTOCK

<大手製薬会社の日本人が北京で「スパイ容疑」で拘束された。レッドラインは曖昧だが、中国と関わるすべての日本人が知っておけばよいことがある>

3月下旬に渋谷で開催されたTBSドキュメンタリー映画祭で、中国の人権派弁護士を撮った作品が上映されていた。私は映画を撮ったTBS報道局の記者から招待されたが、結局、見に行かなかった。なぜなら、おそらく中国大使館の関係者が「誰が来ているか」をチェックしているから。

ジャーナリストの肩書を持つとはいえ、どの報道機関にも属さない私は一介の外国人にすぎない。それでも、日本のメディアで時おり発言しているために、中国ではネット上の売国奴ブラックリストに載っている。映画を見ただけですぐに何かが起きるわけではないが、疑われるような行動はできるだけ慎むに越したことはない。

一方、北京では同じ3月下旬、大手製薬会社のアステラス製薬の現地法人に勤める50代の日本人男性が「スパイ容疑」で拘束されたことが分かった。

4月2日には、林芳正外相が訪中して王毅政治局委員らと会談し、男性の早期解放を求めた。だが7日に立憲民主党の泉健太代表と会談した呉江浩(ウー・チアンハオ)駐日大使が、男性の「スパイ容疑はますます確実になっている」と述べるなど、事態は深刻さを増している。

越えてはならないレッドラインはどこにあるのか。その境界線は曖昧で、明確な規定など示されない。そのため、この男性のような在中日本人も、私のような在日中国人も、常に慎重さが求められる。

拘束された男性は日中友好にも尽力していたと聞く。彼がいわゆるスパイ活動をしていたのかは知る由もないが、そんな「好人物」でも捕まってしまうのかと暗澹たる気持ちになる。

今回の拘束に関して日本政府が抗議するのも、日本人が腹を立てるのも当然の反応だろう。ただ、これは「Tokyo Eye」コラム。事の善し悪しを論じるのが趣旨ではない。

そこで、多くの人が気になっているであろう別の角度からアプローチしてみよう。ビジネスなどで中国と関わる日本人はいかに当局とのトラブルを避ければいいのか、だ。

出鼻をくじくようで恐縮だが、100%確実な方法があるわけではない。その点を了承の上、参考にしていただきたい。

それでも普段、何に気を付ければよいかを知っておいて損はないだろう。

仕事で成果を出すために、重要となるのが人脈づくり。特に中国では人とのつながりが直接仕事へと結び付く。その際に肝に銘じてほしいのは、今や日本での人との付き合いで注意すべき距離感とさほど変わらないということだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story