コラム

自転車を分解して鉄道で運ぶ......知られざる日本文化「Rinko」

2021年03月13日(土)15時30分
トニー・ラズロ

筆者が所有するコンパクトな折り畳み自転車だが、今では断捨離の対象に Courtesy Tony Laszlo

<海外では目新しかった日本の「輪行」は、なんとそのまま外来語として定着した>

外国語に翻訳するのに苦労する日本語は、いろいろある。多いと言えるかもしれない。代表的な日本語の1つは「やっぱり」。英語だと「I knew it」も「After all」も候補だけれど、どちらもしっくりこない。やっぱり、「やっぱり」は訳しにくい。

もう1つが「輪行(りんこう)」だ。え? 初耳?

これは鉄道などを使って自転車を運ぶことを意味する。自転車好きにはおなじみだ。そしてなんと海外で外来語として定着してきた。「Rinko bike」は、分解したりした上、専用の袋にまとめて電車やバス、飛行機などに持ち込みやすい自転車を指す。

ただの分解ではなく、自転車をうんと小さくしまい、またパーツを守るために特殊な金具や縛りを使用する。

「輪行」がなぜ外来語になったかというと、それは「寿司」と同じ理屈。すなわち、それまでにないものや概念の呼び名だったからだ。海外でまねされるだけの工夫を、日本の自転車好きが考え出した。自転車をこのように分解して持ち運ぶのは、他の国では目新しいことだったので名前が必要だった――「Rinko」。

EUでは電車+自転車

筆者が最近まで住んでいたドイツをはじめとする多くのEU諸国では、たいてい自転車を分解せず電車に持ち込める。指定車両限定で、別料金を払う、というのが条件。交通機関のちょっとしたサービスではあるが、人々が電車+自転車で動けることは、まちづくりにかなり影響を与えている。

例えば、店やイベント会場が駅からやや離れていても、それなりに人を集められる。電車通勤をする人も、駅で降りたらそのまま自転車に乗れるので、自宅をより離れた場所に構えることが可能だ。駅のそばだと住宅価格があまりにも高くて......という人は、これで手が届くかも。

シェア自転車という選択肢は欧州にもあるが、借りたいときにちょうどないこともあるし、手間がかかり少し割高という場合もある。

筆者はまだ分解を伴う輪行に手を出したことはないが、それに近いことなら少し経験がある。わが子の中学校は家から遠く、登校には片道1時間半もかかる。駅まで歩いて、朝のラッシュ時に3回乗り換えをして通っている。

これは日本ではそう珍しいことではないようだが、どうにか解消できないかと考えた。もし自転車をそのまま持ち込めたら、40分こいでから電車に乗り、乗り換えなしでゴールイン。でもそれができない。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ

ビジネス

完全失業率3月は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story