コラム

オンライン授業で成績が上がった息子 日本の学校におすすめしたい「ハイブリッドモデル」とは

2020年10月22日(木)13時55分
トニー・ラズロ

KAZUMA SEKI/ISTOCK

<休校措置で子供の学習機会が失われ、習得できたはずの技術を身に付けられないスキルロスが深刻な経済損失につながるという見方もあるが>

学校でだけ教育を受けた子供は、教育を受けた子供とは言わない──哲学者ジョージ・サンタヤーナのこの名言が最近気に入っている。

日本はコロナ感染に対する不安の中、比較的早く小中高校生が学校に戻れるよう命じた。一方、国内でも一部のインターナショナルスクールはもう少し慎重な対応を取っている。登校が選択制になっているところもあり、わが子が通う学校も「対面・オンライン」ハイブリッドモデルを導入している。ざっと見て、生徒の約半数が登校し、残りは家からズーム(Zoom)で参加している。一部の教員もリモート授業を実施している。

因果関係がある保証はないが、主にオンライン授業を通じて学習している息子は、最近勉強の調子がいい。とにかく昨年(コロナ禍前)より成績がいい。また、勉強の内容が一家だんらんのネタになるので、本人にとって学問と実生活のつながりがよく見え、その内容を学んできた理由を感じるようになったようだ。保護者として、オンライン授業は「悪くないぞ」と思っている。

国によって長さは違うが、今春、世界中の学校でコロナ禍によるシャットダウンは少なくとも10週間に及んだ。わずかな期間に感じるかもしれないが、OECD(経済協力開発機構)の研究によれば、このちょっとした停滞が世紀末までに世界のGDPをなんと1.5%低下させる恐れがある。アメリカだけで経済的損失が15兆3000億ドル(約1615兆円)という計算になる。

原因はスキルロス。つまり休校の間、生徒が学校で身に付けるはずだった技術が身に付かなかったことによる技術習得の低下。今後いろいろな職に就いていく今の若者が、技術を習得できなかったことに関連して給与が上がらず、その結果これだけの経済的損失になる、とOECDは言う。

目と耳を疑った私は、周りにいる賢い人たちに聞いてみた。すると、多くの友人から反論が出た。例えば、料理を習ったり家庭菜園やペットの世話をしたりして、学校で学べなかったものに出合い、力を付けているので、経済的損失にはつながらないのではないか、と(実業家の友人の意見)。

また、確かにそれなりの損失は発生するが、それよりは人工知能(AI)が仕事を著しく奪っていくことのほうが課題(経済学者の友人)。大人になった彼らはそもそも思うように就職できず、とてつもなく巨大な失業問題が発生するはずだから。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど

ワールド

リビア軍参謀総長ら搭乗機、墜落前に緊急着陸要請 8

ビジネス

台湾中銀、取引序盤の米ドル売り制限をさらに緩和=ト

ビジネス

政府、25・26年度の成長率見通し上方修正 政策効
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story