コラム

「部外者」には分かりにくい、日本の見えないマナー違反

2020年02月22日(土)15時40分
李 娜兀(リ・ナオル)

このように明文化されているわけではないルール、マナーを守ることは、その文化や習慣の外側で暮らした人にとっては、なかなか難しい。そしてマナー違反をする側にも、それぞれ何らかの背景があることも少なくない。

最近、こんなことを改めて考えたのは、テレビで日本の小中学校の不思議な校則のニュースを見たからだ。学校から帰宅後、午後4時まで外に出てはいけない「4時禁ルール」や、昼食の時間に一定の時間、会話してはいけない「もぐもぐタイム」という決まりには驚いた。「もぐもぐタイム」について娘に聞くと、かつて経験があると言う。食べ残しをなくすという目的は分かるが、やはりちょっと不自然だ。

ほかにも日本の小学校によくある決まりの中に、理解できないものは結構ある。筆箱は四角く硬いものでなければならず、鉛筆は後ろに消しゴムが付いているものは駄目......などだ。

それぞれのルールには存在する理由や背景があるのも確かだが、理解できないルールに従うのは苦しい。そこで言いたいのは、特に文化的背景の違う人に対しては、理由や背景を説明してほしいということ。そして理屈が立たないルールは見直してほしい。

それともう1つ。実は電車で怒られたエピソードには続きがある。夫を注意した男性があまりに大声で怒るので、私が「普通に言えば分かるのに、なぜ怒鳴るんですか」と聞いた。するとこの男性は一瞬、戸惑ったような顔をして「それもそうだ」と言った。「説明は怒らずに」というのもポイントだ。

magTokyoEye_Lee.jpg李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。

<本誌2020年2月25日号掲載>

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2020年2月25日号(2月18日発売)は「上級国民論」特集。ズルする奴らが罪を免れている――。ネットを越え渦巻く人々の怒り。「上級国民」の正体とは? 「特権階級」は本当にいるのか?

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