「部外者」には分かりにくい、日本の見えないマナー違反
このように明文化されているわけではないルール、マナーを守ることは、その文化や習慣の外側で暮らした人にとっては、なかなか難しい。そしてマナー違反をする側にも、それぞれ何らかの背景があることも少なくない。
最近、こんなことを改めて考えたのは、テレビで日本の小中学校の不思議な校則のニュースを見たからだ。学校から帰宅後、午後4時まで外に出てはいけない「4時禁ルール」や、昼食の時間に一定の時間、会話してはいけない「もぐもぐタイム」という決まりには驚いた。「もぐもぐタイム」について娘に聞くと、かつて経験があると言う。食べ残しをなくすという目的は分かるが、やはりちょっと不自然だ。
ほかにも日本の小学校によくある決まりの中に、理解できないものは結構ある。筆箱は四角く硬いものでなければならず、鉛筆は後ろに消しゴムが付いているものは駄目......などだ。
それぞれのルールには存在する理由や背景があるのも確かだが、理解できないルールに従うのは苦しい。そこで言いたいのは、特に文化的背景の違う人に対しては、理由や背景を説明してほしいということ。そして理屈が立たないルールは見直してほしい。
それともう1つ。実は電車で怒られたエピソードには続きがある。夫を注意した男性があまりに大声で怒るので、私が「普通に言えば分かるのに、なぜ怒鳴るんですか」と聞いた。するとこの男性は一瞬、戸惑ったような顔をして「それもそうだ」と言った。「説明は怒らずに」というのもポイントだ。
李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。
<本誌2020年2月25日号掲載>

アマゾンに飛びます
2020年2月25日号(2月18日発売)は「上級国民論」特集。ズルする奴らが罪を免れている――。ネットを越え渦巻く人々の怒り。「上級国民」の正体とは? 「特権階級」は本当にいるのか?
イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは 2025.08.07
韓国スタートアップが日本へ続々進出... 官民挙げて商機を狙う背景は 2025.07.29
参政党の「日本人ファースト」は日本第一党の「日本第一主義」と同じに思える 2025.07.18
日本は戦争で荒廃したイランの後に続くのか 2025.07.16
アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が象徴する、フランスで続く日本ブーム 2025.07.16
日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」身近すぎて見えないこともある 2025.07.11
突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋没させるな 2025.06.28