若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止まらない
生命保険社会貢献財団がソウル・漢江大橋に設置した「SOS生命の電話」(撮影=筆者)
<長寿国でありながら自殺率はOECD平均の2倍以上。初めて40代の死因1位が自殺となった背景は──>
韓国保健福祉部(日本の厚生労働省に相当)が今年7月に発表した報告書「OECD保険統計」では韓国人の平均寿命は83.5歳となった。経済協力開発機構OECD加盟国平均の81.1歳を2.4年上回るが、一方で自殺率は加盟国平均10.7人の2倍以上。韓国の自殺率は2003年以降、OECD加盟国で不動の1位を維持している。
韓国統計庁の発表によると2024年の韓国における死亡者は35万8569人で、そのうち1万4872人が自殺だった。人口10万人あたりの自殺者は29.1人で前年を1.8人上回り、2011年の31.7人以来、13年ぶりの高い水準を記録した。
そしてもう一つ気になるのは、1983年の統計開始以来はじめて40代の死因の1位が自殺となったことだ。10代から30代の主な死因だった自殺が40代まで広がったことになる。
自殺率の推移を年代で見てみると19歳以下は2010年の3.0から17年には2.6に下がったが、23年には4.6まで上昇。若者層(20~39歳)も2010年の27.2から17年は20.6に減少したが、23年は24.4に増加した。中高年層(40~64歳)も2010年の37.9から17年には29.4に下がったものの23年は32.0へと悪化した。一方で、65歳以上の高齢者層は2010年の80.9から17年には47.7、23年は40.6と減少傾向を見せている。
生活苦が主な要因に
30代から50代の主な自殺要因に生活苦がある。生命保険社会貢献財団がソウル・漢江の橋に設置した「SOS生命の電話」で、23年1月から3月に受けた30代から50代男性の相談は「生活苦」(33.9%)が最も多かった。
貸出金利の上昇、物価高騰と実質賃金の低下や消費不振など、とりわけ自営業者を取り巻く環境は劣悪だ。韓国銀行が国会に提出した資料によると24年10-12月期の自営業者の延滞率が貯蓄銀行は9年半ぶり、与信専門金融会社は10年半ぶりの最高値を記録した。
対人関係のストレスも主な要因だ。立場的に上位の者が下位の者に圧力をかけ、その下位の者がさらに弱い者を圧迫する「カプチル」と呼ばれるパワハラや、組織内の熾烈な出世競争が精神的な負担となることも多い。最近ではメンタルヘルスを重要な福利厚生と位置付ける韓国企業も少なくないという。






