コラム

「反韓」ではなく「嫌韓」なのはなぜ?

2019年11月28日(木)17時15分
李 娜兀(リ・ナオル)

ただ、どうしても気になるのは「嫌韓」という言葉だ。「反韓」という言葉もなくはないが、「嫌韓」のほうがはるかに定着している。アメリカや中国に「嫌」より「反米」「反中」を主に使うのとは対照的だ。「反」なら良いということではもちろんないが、同じ否定的な言葉でも、「嫌い」には情緒的に全否定するニュアンスがある。知人に「あなたの考え方には反対だ」と言われるよりも、「あなたのことは嫌いだ」と告げられるほうがショックだろう。

世界中どこでも隣国関係は複雑だ。歴史問題などで関係がぎくしゃくするなか、韓国政府の政策や韓国メディアの報道に反発する人が日本国内で増えることは理解できる。ただ、そういう人たちの中にも一度はまった韓国ドラマは見続けたり、韓国料理は好きだったりする場合もあるだろう。

であれば、時代遅れの差別意識から韓国を下に見て全否定するのを「嫌韓」、部分的に反対するのは「反韓」と分けて考えるのもありではないか。こうした議論が、お互いに「全否定はやめよう」という機運につながるかもしれない。もちろん日本に住む韓国人としては、「嫌」も「反」も乗り越えて両国が仲良くできるのが望ましいけれど。

magTokyoEye_Lee.jpg李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。

<本誌2019年11月26日号掲載>

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12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

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