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ガザの記者が消された意味 本当の物語はもう世界に届かない

Killing the Witness: Gaza’s Journalists and the Global Blueprint of Disappearance

2025年8月13日(水)21時37分
ジョン・マークス

証人がいなくなった後に何が起こるかも、歴史は示している。旧ユーゴスラビアや、シリア、ミャンマーでは、独立した目がないことで加害者が記録を支配し、自らの説明だけを唯一の真実として押し通した。

大量の強制移住や攻撃の犠牲が予想される戦争では、独立した報道を封じることがしばしば初期の作戦手順となる。

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボではテレビ局が砲撃で暗闇に沈み、シリアのアレッポでは記者が瓦礫の中を追われた。ミャンマーでは少数民族ロヒンギャの迫害を取材していた記者が投獄され、あるいは命を落とした。

理由はほとんど変わらない。目撃者がいなければ、残虐行為は否定され、時系列は書き換えられ、死者数は噂に過ぎないと矮小化される。その空白の中で、真実は権力者が望む形に作り変えられる。カメラを持つ者がいなくなれば、何を見せられることになるかわかりはしない。

記者を排除する狙いは、情報を制限するだけではない。紛争の感情的な地形を作り変えることにある。記者が殺されるたび、生き残った記者には「命の保障はない」「報道すれば命を狙われるかもしれない」という警告が送られる。

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