最新記事
アルジャジーラ

ガザの記者が消された意味 本当の物語はもう世界に届かない

Killing the Witness: Gaza’s Journalists and the Global Blueprint of Disappearance

2025年8月13日(水)21時37分
ジョン・マークス

これは心理戦であり、記者たちが奉仕する市民も同じだ。明確に「報道」の腕章をつけた者すら攻撃されるのを目にすれば、そこには中立地帯もいかなる盾もないと理解する。

記者が追い出され、沈黙させられるほど、権力側の説明に異を唱える者は減り、住民は権力者を経由した情報に依存するしかなくなる。アルゼンチンの反体制派弾圧、スリランカの内戦、フェルディナンド・マルコス政権下のフィリピンでは、こうした戦術が住民の抵抗意志を挫くために使われた。

「自分たちの苦しみは決して目撃されず、信じられることもない」という確信を植え付けるのだ。ガザの停電も、記録を奪うだけでなく、真実が届くという希望そのものを消し去るものだ。

ガザなど国外で報道を封じるために使われた青写真は、すでにアメリカに輸入され足場を築きつつある。アメリカには、国内200以上の収容施設を運営し、多くが軍事施設のような規律と秘密主義を備えるICE(移民関税執行局)という組織がある。現政権とその同調者はICEを使って大規模な強制送還を進めるほか、出生地主義の廃止(現在は連邦地裁が差し止め中)、軍事基地での収容能力拡大などを推し進めている。

ICEの活動、特に強制送還作戦、職場への急襲、収容施設内の現状を調査してきた記者は、しばしば障害に直面してきた。立ち入り拒否、法的措置の脅し、強制退去などだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米政権、1.6兆ドルの学生ローン債権の一部売却検討

ワールド

ノーベル物理学賞、米国拠点の3氏に 次世代量子技術

ワールド

米ホワイトハウス、政府閉鎖中の職員給与保証せず=ア

ワールド

アングル:超長期金利、30年債入札無難で上昇一服 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレクションを受け取った男性、大困惑も「驚きの価値」が?
  • 3
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿すると「腎臓の検査を」のコメントが、一体なぜ?
  • 4
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 5
    一番お金のかかる「趣味」とは? この習慣を持ったら…
  • 6
    筋肉が育つだけでは動けない...「爆発力」を支える「…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃の「オーラの違い」が話題…
  • 8
    監視カメラが捉えた隣人の「あり得ない行動」...子供…
  • 9
    「不気味すぎる」「昨日までなかった...」ホテルの天…
  • 10
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 7
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 8
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 9
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 10
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中