最新記事
中東

なぜサウジとエジプトの関係は悪化したのか――サウジの「財布」に頼る危うさ【note限定公開記事】

Arab Fault Lines

2025年10月7日(火)17時05分
ハレド・ハッサン(安全保障・外交政策専門家)
国旗を背に並ぶムハンマド・ビン・サルマン皇太子とシシ大統領

昨秋エジプトを訪れたムハンマド皇太子(左)を歓迎したシシだが EGYPTIAN PRESIDENCYーANADOLU/GETTY IMAGES

<多角化を進めるムハンマド皇太子と、軍主導の統治を続けるシシ大統領。統治哲学の違いが両国の断層を深めた。エジプトのジレンマとアラブ協調の綻びを読み解く>


▼目次
1.静かに広がる断層
2.アラブ協調の綻び、断層線はどこへ伸びるか

1.静かに広がる断層

中東を最も大きく揺さぶる亀裂は往々にして人知れず静かに広がってきた。エジプトとサウジアラビアの関係悪化はその一例だ。

中東・北アフリカの安定に重要な役割を担う2つの地域大国を引き裂くこの亀裂は、統治哲学の衝突に根差したもので、地域全体の分断を加速させかねない。

サウジアラビアの事実上の指導者、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「ビジョン2030」を掲げ、石油依存からの脱却を目指して経済の多角化を進めようとしている。

一方、エジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領は強権的な姿勢と軍による経済支配を変えようとしない。

シシが事実上のクーデターで実権を握った2013年から19年までにサウジアラビアは約250億ドルの対エジプト支援を行い、シシは「溺れる」自国を救ってくれたと感謝した。

だが今ではムハンマド皇太子は一向に改革を進めないシシに業を煮やしている。サウジアラビアは支援継続の条件としてエジプトに改革の実行を迫るようになった。

エジプトの脆弱な経済を支えるにはサウジアラビアの援助が不可欠だ。エジプト経済は国外で働く出稼ぎ労働者からの送金に大きく依存している。

エジプト人労働者の最大の受け入れ国はサウジアラビアだ。加えてサウジアラビアの多額の投資もエジプト経済の頼みの綱となっている。

にもかかわらず、今や両国は既成メディアやSNSで政府が陰で糸を引く口撃合戦を繰り広げている。

エジプトの情報当局と関係があるインフルエンサーはサウジアラビアの王族に激しい個人攻撃を行い、特に皇太子を口汚く罵っている。

対して皇太子と親しいとされるサウジアラビアのジャーナリストは、26年までにシシは失脚し、投獄される可能性があると主張。公然たる罵倒は両国関係が修復不能なまでに悪化していることを物語る。

2.アラブ協調の綻び、断層線はどこへ伸びるか

◇ ◇ ◇

記事の続きはメディアプラットフォーム「note」のニューズウィーク日本版公式アカウントで公開しています。

【note限定公開記事】なぜサウジとエジプトの関係は悪化したのか――サウジの「財布」に頼る危うさ


ニューズウィーク日本版「note」公式アカウント開設のお知らせ

公式サイトで日々公開している無料記事とは異なり、noteでは定期購読会員向けにより選び抜いた国際記事を安定して、継続的に届けていく仕組みを整えています。翻訳記事についても、速報性よりも「読んで深く理解できること」に重きを置いたラインナップを選定。一人でも多くの方に、時間をかけて読む価値のある国際情報を、信頼できる形でお届けしたいと考えています。


ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    バイデンと同じ「戦犯」扱い...トランプの「バラ色の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中