「美しい国」に来て35年...日本にとけ込む努力を続けたイラン人が語る「日本で暮らす外国人」の本音

美しく艶めくシルクのペルシャ絨毯を手にするレファヒーさん (記事中の写真はすべて筆者撮影)
東京・吉祥寺の駅からほど近い一角に構えるショールームは、色鮮やかなペルシャ絨毯が整然と並ぶ「カスピアン」。緻密で繊細な模様、趣深い色彩、手織りならではの温もり──。
「これはコム、あっちはエスファハーンの作家さんの作品です」と数百、数千とある展示品の1つ1つを記憶しているかのように大事に扱うのは、お店を営むアハマッド・レファヒー(アリ)さん。「受け入れられた」と感じた異境の「美しい国」・日本に根差して35年、激動する世界と不安定化する社会の荒波の中、順調だったエスニックビジネスの絨毯販売業もまた試練の時を迎えている。
ビジネスの停滞と続く緊張
「本当はこの春にイランに行く予定だったんですが...」。レファヒーさんは少し戸惑い気味に言葉を選んだ。
毎年、イランの新年を祝う3月20日の「ノウルーズ」が明けた春先は、大切な仕入れの季節だった。しかし、今年は例年にない不穏な動きを察知し、渡航を自粛。案の定、その直後にイスラエルや米国による軍事攻撃を受け、イラン国内は大混乱に陥った。今も不安定な情勢が続く。
「以前は毎週のように、きちんと品物が届いていました。ただ、今は薬や緊急物資の配送、輸送が優先で、私たちの商品を運べるような状態ではありません」とレファヒーさんは肩を落とす。既に完成した絨毯商品は、テヘランのバザールの店舗に眠ったままだ。