日本の高校生が「社会に出たら理科は役に立たない」と考える理由
OECDの「PISA 2015」(学習到達度調査)では、探究型の理科の授業スタイルに関連する9つの設問が用意されている。
①生徒には自分の考えを発表する機会が与えられている。
②生徒が実験室で実験を行う。
③生徒は、科学の問題について議論するよう求められる。
④生徒は、実験したことからどんな結論が得られたかを考えるよう求められる。
⑤先生は理科で習った考え方が、多くの異なる現象に応用できることを教えてくれる。
⑥実験の手順を生徒自身で考える。
⑦調査についてクラスで議論する。
⑧先生は、科学の考えが実生活に密接に関わっていることを説明する。
⑨生徒は、アイデアを調査で確かめるよう求められる。
これらへの回答を合成して、理科の授業の探究型レベルを測る尺度を作ってみる。「全ての授業でそうだ」には4点、「たいていの授業でそうだ」には3点、「たまにある」には2点、「全く・ほとんどない」には1点のスコアを付ける。この場合、回答した生徒が受けている理科の授業がどれほど探究的かは、9~36点のスコアで計測される。
各国の理科の授業はどれほど探究的か。<表1>は、65カ国の平均値を高い順に並べたランキングだ。
日本の生徒(6097人)の平均値は16.68点で、65カ国の中で最も低くなっている。超受験社会といわれる韓国よりも低い。何とも残念な現実だ。これは10年前の調査データから試算した数値だが、冒頭で見たように、理科の有用性を感じる生徒が少ないことを考えると、現在でも状況はあまり変わっていないのかもしれない。
次期学習指導要領改訂に向けた議論では、「授業時数をこれ以上増加させないこと」に留意し、「新たな学びにふさわしい教科書の内容や分量を検討する」こととなっている。文部科学省も、受験を念頭にした注入主義の弊害を意識しているのだろう。国際的に見て、日本の生徒の理科学力は高い。だが机上の学力を鍛えても、それを活かして理系職を志す生徒が出てこないのはもったいない。詰め込み過ぎを是正し、探究型の授業の比重を増やし、興味や自信を生徒に持たせるべきだ。
<資料>
OECD「PISA 2015」の個票