「寄生バエ」撃退作戦、米メキシコ国境で家畜輸入再開へ──不妊虫で築く「生物の壁」

ラセンウジバエの発生は畜産業界の死活問題だ JOSE LUIS GONZALEZーREUTERS
<メキシコで拡大していた寄生虫「ラセンウジバエ」の影響で停止されていた家畜輸入が、7月7日から米国で段階的に再開される>
米農務省が6月30日、対メキシコ国境の通関地を経由する家畜の輸入を7月7日から段階的に再開すると発表した。
寄生虫の新世界ラセンウジバエ発生がメキシコで拡大したことを受け、アメリカが南部国境経由の家畜輸入を停止したのは5月11日。両国が協力して対策を続けた結果、再開が決まったと、ロリンズ米農務長官は声明で述べている。
ラセンウジバエは家畜の傷口に卵を産み、幼虫は生体組織を食べて成長するため、家畜はしばしば死亡する。今回の発生は2年前に始まり、中米を北上していた。
対策の1つが不妊虫放飼法だ。メスのラセンウジバエは生涯に1度しか交尾しない。不妊化したオスを大量に放てば、繁殖を抑え込める。
メキシコの南部メタパで改修中の不妊バエ増殖施設は、来年7月までに1週間当たりの増殖量が最大1億匹に達する予定だ。ラセンウジバエを阻止する「壁」を、中米と南米の境目まで引き戻す長期目標の達成は遠くないだろう。