ネタニヤフと米外交の舞台裏...「最後は自分の思い通りに」トランプを動かした男
トランプ氏を動かす
23年10月、イスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けると、バイデン大統領(民主党)はイスラエルとの連帯を示すため同国を訪問した。対イスラエル軍事支援も承認した。
しかし、パレスチナ自治区ガザでイスラエルの攻撃による民間人の犠牲が急増し、人道危機が懸念されるようになるに伴い、ネタニヤフ氏とバイデン氏の関係は急速に悪化した。バイデン氏は、イスラエルへの一部兵器の提供を凍結し、暴力的なイスラエル人入植者に制裁を科した。
24年11月の米大統領選挙でトランプ氏が返り咲きを果たしたことは、ネタニヤフ氏にとって朗報だった。しかし「これでうまく事が運ぶ」という同氏のもくろみは外れる。
前任者のバイデン氏と同様、トランプ氏もガザでの長引く紛争に不満を持っていた。今年4月、訪米したネタニヤフ氏と会談したトランプ氏は、イランと直接交渉を開始すると述べた。
トランプ氏が自らを和平推進者と称する一方で、ネタニヤフ氏は一貫して軍事介入を主張した。6月13日未明、イスラエルはイランへの空爆を開始するとともに、米国に参戦を求めた。攻撃計画について、ネタニヤフ氏がトランプ政権に「イエス」と言わせたかどうかは定かでないが、少なくとも「ノー」ではなかったと両国の高官筋は述べている。
米東部時間21日、トランプ氏はイランの核施設3カ所に対して攻撃を実施し「大成功」だったと表明。「イランの主要な核濃縮施設は完全かつ全面的に消滅した」と述べた。
ネタニヤフ氏は、「おめでとう、トランプ大統領。イランの核施設を、米国の凄まじく正しい力で攻撃するというあなたの大胆な決断は、歴史を変えるだろう。歴史は、トランプ大統領が世界で最も危険な政権に世界で最も危険な武器を持たせないために行動したことを記録するだろう」と述べた。
それはトランプ氏の決断を称えるとともに、「最後は自分の思い通りにする」を果たしたという意味も込められていると言える。


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