最新記事
ガザ

命がけで並ぶ配給所の列...イスラエル封鎖下のガザで起きていること

2025年6月12日(木)08時26分
パレスチナ自治区ガザ南部ラファの物資配給拠点に先週向かった大学教授のニザム・サラマさん

6月10日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファの物資配給拠点に先週向かった大学教授のニザム・サラマさん(52・写真)は、2度にわたって銃撃に見舞われ、飢えた群衆に押しつぶされた末、手ぶらで帰宅した。写真は6月、ハンユニスの難民キャンプにあるサラマさんのテントで撮影(2025年 ロイター/Hatem Khaled)

先週、パレスチナ自治区ガザ南部ラファの物資配給拠点に向かった大学教授のニザム・サラマさん(52)は、2度にわたって銃撃に見舞われ、飢えた群衆に押しつぶされた末、手ぶらで帰宅した。

物資配給拠点は民間軍事請負企業と協力する米国拠点の組織「ガザ人道財団(GHF)」が運営している。サラマさんは海岸沿いの道をラファへと向かう群衆に加わるため、現地時間3日午前3時に家族と住むテントを出発。その直後に最初の銃撃が始まった。


 

2度目に銃撃に遭ったのは物資配給拠点に近いアル・アラム地区の環状交差路で、そこでは6人の遺体を目撃した。

パレスチナ保健当局によると同日、イスラエル軍は援助を求める人々に向けて銃撃を行い、27人が死亡した。イスラエル側は、自軍が脅威と見なした集団に対して発砲したと主張し、軍は事件を調査中だと説明している。

GHFが提供した撮影日不明の監視カメラ映像をロイターが確認したところ、「SDS1」と呼ばれるこの物資配給所では、開門前から長蛇の列ができていた。その先には砂の壁で囲まれた場所があり、テーブルや地面に物資の箱が置かれていた。

開門と同時に数千人が殺到した様子を、サラマさんは「死の罠」と説明した。

「生き残るのは強者だ。体力があって人より早く到着し、人を押しのけて箱を手に入れられる者だ。自分の肋骨同士がぶつかり合っているのを感じた。胸が内側に押し込まれるような感覚だった。呼吸が、できなかった。人々は叫んでいた。まったく呼吸できなかった」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 9
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中