「兵器は増やせても、人が足りない」...ヨーロッパの防衛産業を襲う人材危機
2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、EUの軍事調達支出の78%が域外に流出し、米国だけで63%を占めている。理由のひとつは、欧州の防衛産業が各国間で分断されているためだ。EUは調達の大部分を欧州域内に移行する計画で、新たな「スキル連合」戦略により防衛分野の人材不足解消を目指している。
一方、ロシアでは潤沢な資金を持つ軍需産業による採用が、他分野での人材不足を引き起こしている。
競争力への懸念
ウクライナで使用されているカエサル自走榴弾砲を製造している仏独防衛企業KNDSは、フランス中央部のブールジュの主要生産拠点でシフトを拡大し、採用を年間50%増加させている。
マネージングディレクター、ニコラス・シャムシー氏は、賃金を無制限に引き上げるには限界があると指摘した。
「わたしたちは戦時経済の中にいるが、同時に今は経済戦争でもある。賃金をむやみに上げれば、競争力が低下する可能性がある」
取材した関係者らは、自律兵器システムを開発できるAI専門家や、小規模で製造される製品の専門知識を持つ人々が特に求められていると述べた。
KNDSの広報担当者のガブリエル・マッソーニ氏は、「自走榴弾砲をプジョー308と同じように生産するわけはない。非常に特定の技能とノウハウを持っている必要があり、そのような人材は労働市場で希少だ」と語った。
コンサルティング会社のケアニーは、現在の北大西洋条約機構(NATO)の目標である防衛支出GDP比2%から3%へ増加する場合、欧州で最大76万人の新しい熟練労働者を必要とすると報告書で述べた。