最新記事
DEI

「息ができない」ジョージ・フロイド事件から5年...「企業も社会も沈黙へ」立ち止まるアメリカの人種正義

2025年5月27日(火)20時35分
ロイドさんが殺害された現場に花を手向ける人々

5月25日、 シャリードゥー・マクギーさんは従兄弟のジョージ・フロイドさんが警察に殺害された事件の記憶を後世に伝えるために闘っている。写真は23日、フロイドさんが殺害された現場に花を手向ける人々(2205年 ロイター/Leah Millis)

シャリードゥー・マクギーさんは、従兄弟のジョージ・フロイドさんが警察に殺害された事件の記憶を後世に伝えるために闘っている。

黒人のフロイドさんが2020年5月、警察官に数分間にわたり首を押さえられ、「息ができない」とあえいで亡くなった事件の際、世界中で数百万人の人々が抗議デモを行った。


 

「息ができない」は警察の責任を追及し、人種的正義を求める合言葉となった。企業は体系的な差別に対処するために多額の資金拠出を約束。そして構造的な人種差別を巡る議論が脚光を浴びた。

しかし、フロイドさん殺害からちょうど5年が経過した今、米国では人種的平等の取り組みに対する支持が劇的に反転している。米企業と政府の約束は後退、または撤回された。トランプ米政権は「多様性、公平性、包摂(DEI)」に関する政策やプログラムを攻撃している。こうした後退はトランプ氏が2期目の大統領に就任する前から始まっていた。

フロイドさん殺害は「究極の犠牲だった。この事件から人々が学ぶ機会を作らなければ、この大きな損失を受けて変化を起こさないなら、犠牲は無駄になる。彼の死は無駄だったことになる」。 従兄弟のマギーさん氏は22日、フロイドさんをしのぶイベントで訴えた。

人種的正義の実現を訴える人々は、大きな改革こそ実現していないが全国的な動きは続いていると語る。しかし同時に、その道のりは険しく、多様性推進や公民権に対する激しい反発に遇っていると認める。

専門家は、こうした運動が反動の時期を迎えるのは過去にも繰り返されてきたことだと言う。米国史を振り返ると、公民権運動後を含む多くの時期に、状況がある程度進展した後の「人種疲れ」が見られた。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国政治局会議、経済支援へ 無秩序な競争取り締まり

ビジネス

日産、4━9月期は営業赤字1800億円見込む 通期

ビジネス

伊GDP、第2四半期は前期比-0.1% 予想外のマ

ビジネス

ユーロ圏GDP、第2四半期速報は前期比+0.1% 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 3
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突っ込むウクライナ無人機の「正確無比」な攻撃シーン
  • 4
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 10
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中