韓国大統領選の最有力候補イ・ジェミョンが、リーボックのスニーカーを品切れにさせた理由

選挙運動初日の舞台でReebokのスニーカーに履き替えるイ・ジェミョン Chris Jung-NurPhoto-Reuters
<出陣式で若々しいイメージを与えるためだけではなかった──>
「今はイ・ジェミョン」──この言葉が貼られた一足のスニーカーが、韓国の政治風景を揺るがしている。
韓国の大統領選挙戦初日の5月12日、共に民主党のイ・ジェミョン大統領候補がソウル市光化門(カンファムン)の清渓(チョンゲ)広場での出陣式に現れた時、誰もが彼の足元に注目した。スーツからジャンパーに着替え、靴を脱いでスニーカーに履き替える様子は、選挙戦を「一生懸命走る」という決意表明だった。しかし、それはただの靴の履き替えではなかった。ニューシス、マネートゥデイ、国民日報など韓国メディアが報じた。
彼が選んだリーボックの「クラシックレザーGY1522」には政治的な計算が込められていた。もちろん、若々しいイメージを与えるという狙いもある。靴の側面には堂々と「今はイ・ジェミョン」という選挙戦のスローガンが貼られている。だが何よりも、このスニーカーが白をベースに青と赤をあしらったトリコロールカラーだという点が最大のポイントだった。これはイ候補を擁する共に民主党の象徴色である青と、対立政党「国民の力」の象徴色である赤が共存していたのだ。
ライバル候補の政党カラーも入れた理由
韓国の選挙戦では、自党のカラーだけでユニフォームを統一するのが通例。しかし、イ候補は敢えて「敵」の色も取り入れた。この前例のない選択には「分断された韓国社会の統合」という強いメッセージが込められている。共に民主党の選対総括本部長は「民主党の青と国民の力の赤 ── 統合の象徴です」と説明する。
その意図がSNSで拡散されるや否や、オンラインショッピングモールでは異変が起きた。2022年に発売されて今では約6割引のわずか3万5600ウォン(約3700円)で買えた靴が、たった1日で、このスニーカーは市場から姿を消した。リーボック公式サイトでは全サイズが完売。フリマなどでは33万9300ウォン(約3万5000円)という10倍以上の価格で取引される「イ・ジェミョン・プレミアム」現象が巻き起こった。