高所得国を目指す「新生」カンボジアで、日本の存在感が高まる理由...一方、発展を妨げる課題も

カンボジアの首都プノンペンにあるセントラル・マーケットには多様な店が軒を連ねる Oliver Raw / SOPA Images/Sipa USA via Reuters
<2050年までにカンボジアを高所得国にすると宣言したフン・マネット新首相。「日本の意見は重視される傾向にある」とされるが、日本企業のさらなる進出を阻害する要因も>
カンボジアが大きく変わろうとしている。2023年8月、1985年以来政権を握り続けてきたフン・セン氏に変わり、息子であるフン・マネット氏(当時45歳)が首相に就任し政権を継承。マネット氏は米陸軍士官学校を卒業し英プリストル大学で経済学博士号を取得した、国際的な視野を持つ文武両道のサラブレッドで、経済にも明るいと評されている。
就任後に出席したアセアンのビジネスフォーラムでの演説では、下位中所得国である母国を2050年までに高所得国にすると宣言。実現のため、国の開発を加速する総合的な国家経済ビジョンを打ち出した。実際、閣僚評議会の試算では今年度の国民ひとりあたりのGDPは昨年の予測値から40%以上上昇し、国の経済成長率も世界銀行が今年はじめに試算した5.5%を上回る、6.3%に達する見込みと発表している。
高所得国を目指すカンボジアがさらなる経済的発展を遂げるためには外資によるFDI(直接投資)の拡大が不可欠であり、またマネット氏には、これまで中国資本に依存していた投資元を各国へ広く分散したい思惑もあると言われる。となれば、PKO(国際連合平和維持活動)やODA(政府開発援助)を通して長らく信頼関係を築いてきた日本は最有力国だ。
カンボジアへの投資に二の足を踏ませる「不正な取引」の存在
高い経済成長は多くの日本企業にとっても魅力的なはずだが、そうした企業に現地への投資に二の足を踏ませる大きな要因もある。それは、市場における「不正」な商品の取引が顕著であること。このせいで、カンボジアでビジネスを行う外国企業が正常な取引を阻害されるケースも発生している。