最新記事
関税戦争

対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場当たり的な「素人芝居」に振り回される企業の悲哀

The Amateur Hour Presidency: Tariffs, Trade, and the High Cost of Chaos | Opinion

2025年5月14日(水)13時40分
アロン・ソロモン

トランプには筋肉あれど頭脳なし

そして、最終的な目的は何なのか? 新たな通商協定か、関税導入前の正常な状態への回帰か、それとも、勝利を宣言して別の気晴らしに移るための見せかけのパフォーマンスに過ぎないのか。

それは誰にも分からない。なぜなら、そこに一貫した方針など存在しないからだ。


トランプには筋肉はあるが頭脳がない。関税が引き上げられたのはトランプが「勝利したい」と望んだからであり、いま関税が引き下げられるのは、トランプの目にも関税政策による損害が見えてきたからに他ならない。この一件から我々が得たのは、「超大国はこうなってはならない」という痛烈な教訓だ。

トランプ関税と対比されるべきは、本来の通商政策のあり方だ。熟慮された、予測可能な通商政策であり、経済学者や外交官、通商法の専門家、業界関係者らの意見を取り入れた通商政策である。

目指すべきは、短期的な見栄ではなく長期的な競争力の強化であり、市場をぐらつかせる突発的な発表ではなく、安定した政策運営だ。これこそが真に政府らしい通商政策であり、経済を支える投資を行っている企業から信頼を勝ち取る道なのだ。

我々が巻き込まれているのはトランプの「素人芝居」だ。思いつきで行われる政策決定の中、関税は乱暴に振るわれ、通商交渉はリアリティ番組のクライマックスさながらのものとなっている。

我々が受けているのは、経済的な苦痛であり、意味のない犠牲だ。我々が選んだ大統領は、戦略ではなく衝動によってアメリカを統治している。

[筆者]
アロン・ソロモン(Aron Solomon)

英紙『インディペンデント』に掲載した米アメリカンフットボールリーグ(NFL)の「人種規範化」政策を暴いた画期的な論説で、ピュリツァー賞にノミネートされたジャーナリスト。法務博士(JD)でもあり、法律、メディア、戦略の分野における世界的なオピニオンリーダー。
法律事務所向けのデジタルマーケティングに特化したアメリカ企業、AMPLIFYの最高戦略責任者として、その深い専門知識を活かし、リーガル・マーケティングの未来を築いている。
マクギル大学およびペンシルベニア大学で起業家精神を教えた経験もあり、「世界で最も革新的な法律家50人」に贈られるFastcase 50にも選出された。

(本稿で示された見解は筆者個人によるものです)

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、日本からの水産物輸入を即時再開 10都県は除

ビジネス

オープンAI、グーグル半導体を使用 初の非エヌビデ

ビジネス

エヌビディア関係者、過去1年に10億ドル超の株式売

ワールド

米税制・歳出法案、上院で前進 数日内に可決も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    メーガン妃への「悪意ある中傷」を今すぐにやめなく…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中