最新記事
韓国大統領選

疑惑の大統領選候補、支持率は首位──李在明が映す韓国民主主義の矛盾

2025年5月12日(月)12時00分
佐々木和義

前科記録
李在明候補には前科もある。2014年の統一地方選挙から前科記録の公開が義務付けられたが、城南市長選挙に際して公開した記録によると、2003年に検事を詐称した公務員資格詐称で罰金150万ウォン、2004年に飲酒運転による道路交通法違反で罰金150万ウォン、2004年に特殊公務執行妨害で罰金500万ウォンを払っている。さらに2011年にも公職選挙法違反に問われている。

ほかにも、城南市長時代に実兄を精神科病院に強制入院させた疑惑や女優との不倫、学位論文の盗作疑惑など李在明候補を取り巻く疑惑は枚挙にいとまがない。多いときには週3〜4回、裁判所に通った経験もある。

なぜ問題を抱えながらも最有力候補なのか

こうした数々の疑惑や裁判にもかかわらず李在明候補が今回の選挙の最有力候補となっている最大の要因として「コリア・ファースト」政策が挙げられる。朴槿恵政権は米中の狭間で右往左往し、文在寅(ムン・ジェイン)政権は中国寄り、尹錫悦現政権は日米寄りと評されるなか、李在明候補は日米中のいずれにも過度に依存しない「自主外交路線」を掲げて独自色を打ち出している。

また、SNSを活用した親しみやすい政治スタイルも若年層を中心に支持を集めている要因だ。困難な生い立ちから苦学して弁護士になり、地方政治から着実にキャリアを積み上げてきたという「立志伝」的なストーリーも多くの有権者にアピールしている。

さらに、与党の支持率低迷も追い風となっている。現職の尹錫悦大統領の支持率は物価高や住宅問題などの経済政策への不満から低迷しており、「政権批判票」が野党第一党の共に民主党に集まっている。李在明候補は、こうした「反与党感情」を背景に、自らの司法リスクを「政治的弾圧」と主張して支持を固めている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

難民認定の南ア白人59人が米到着、移民規制の中の優

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸、米中合意で景気懸念が緩和

ワールド

トランプ氏、薬価引き下げへ大統領令署名 専門家は実

ビジネス

米財政黒字、4月は23%増の2580億ドル 関税収
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中