アメリカが「次に進む」とは? ロシア寄り仲裁案が示す米の転換点
“Vladimir, STOP!”
降伏とまでいかなくても、トランプの仲裁案は、ロシア軍に態勢を立て直すチャンスを与えるだろう。プーチンが現在の戦闘ラインを維持して、それ以上の進軍はせず、ウクライナ政府の存続を認めると考えるのは、幻想にすぎない。
なにしろプーチン自身がこの1年間、ウクライナが独立国家だというのは作り話であり、ロシアと別個の文化としては存在し得ず、ロシアにはその影響圏を削り取る正当な権利があると堂々と主張してきたのだ。
それだけではない。プーチンはソ連時代にNATOに対抗して結成された軍事同盟であるワルシャワ条約機構の構成地域(旧ソ連諸国だけでなく東ヨーロッパ諸国が含まれる)に、ロシア帝国を再建することに意欲を示してきた。
ゼレンスキーは22年の侵攻直後から、欧米諸国が安全保障を確約するなら、NATO加盟を断念してもいいという考えを示してきた。一方、ロシアによるクリミア併合については、これを承認するのはウクライナ憲法に違反するとして突っぱねてきた。
それならなぜ、11年前にロシア軍が「一発の銃弾も撃たず」クリミアを併合するのを許したのかと、トランプは主張する。だが、当時ゼレンスキーはまだ大統領になっていなかったし、ウクライナ軍も、事実上解体状態にあった。