アメリカが「次に進む」とは? ロシア寄り仲裁案が示す米の転換点
“Vladimir, STOP!”
また、少なくとも当時、ロシアのクリミア併合は、欧米寄りに傾くウクライナ政府を罰する、一回限りの出来事かと思われた。だが、22年にプーチンがウクライナ全体への侵攻へと戦争を拡大すると、国内外の認識も変わった。
確かに、戦争が始まった当初、ドンバス地方とクリミアの住民の多くは、自分はロシア人だと自負していた。従って、状況によれば、彼らはロシアに味方していたかもしれない。だが、ロシア軍が自分たちの住むアパートや病院を爆撃し始めると、住民の意識も変わった。そしてウクライナは、ドンバスとクリミアを奪還するべく戦っている。
さじを投げたトランプ
トランプは1期目の18年に、アメリカはクリミアをロシア領と認めないと述べている。当時、上院外交委員会の幹部だったマルコ・ルビオ現国務長官も、同じ立場を取っていた。だが今、ルビオ(と少し前までゼレンスキーを支持していた多くの共和党議員)は、親ロシアにシフトしつつある。
ルビオは4月23日、トランプの腹心であるスティーブ・ウィトコフ中東担当特使と共に、新たな和平交渉に出席する予定だった。しかし、ゼレンスキーがアメリカの仲裁案を拒否したことを受け、出席を取りやめていた。
アメリカは今後も、ウクライナ戦争の仲裁努力を続けるだろうが、それはルビオなど閣僚レベルの外交関係者ではなく、中堅官僚が担うことになり、交渉に有意な影響を及ぼすことはなくなるだろう。