最新記事
アメリカ

トランプ関税で景気後退? ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンが警告

US Recession Seems Likely, Nobel-Winning Economist Says

2025年4月28日(月)11時50分
マンディ・タヘリ

トランプ氏は市場の乱高下と、他国(中国を含む)による報復関税発表の中で、アメリカ国民に「耐え抜こう」と呼びかけている。

ブリッジウォーター・アソシエイツ創設者のレイ・ダリオ氏はNBCのインタビューで、「今はまさに決断の時であり、景気後退に非常に近い。うまく対処しなければ、単なる景気後退以上の事態になる可能性がある」と語った。

さらにダリオ氏は「こういう時期は1930年代とよく似ている」と指摘し、「歴史は何度も繰り返す。関税、債務、台頭する新興国による既存大国への挑戦──こうした秩序やシステムの変化は非常に破壊的だ。対処を誤れば景気後退どころでは済まない」と述べた。

エコノミストのトルステン・スロック氏もCNBC出演時に、「このまま関税水準が続けば」、2025年には「間違いなく」景気後退が起こると明言した。

トランプ大統領は4月のTruth Socialへの投稿で「これは経済革命だ。我々は勝つ。耐え抜け。簡単ではないが、最終的な結果は歴史的なものになる。アメリカを再び偉大にしよう!!!」と訴えた。

副大統領のJ・D・バンス氏も4月上旬にXで、「ワシントンDCには、中国と本格的な戦争をしたがりながら、重要な供給網は中国に頼ろうとするインサイダーがいる。これは狂気だ。トランプ大統領は平和を望むが、公正な貿易とアメリカ経済の自立も目指している」と投稿した。

中国外務省の林剣報道官は今月、記者団に対して「関税戦争や貿易戦争に勝者はいない。中国はこのような戦いを望まないが、恐れてもいない。中国国民の正当な権利と利益が侵害されるなら、黙ってはいない。アメリカが関税戦争・貿易戦争を仕掛けるなら、中国は最後まで対抗する」と述べた。

ケイトー研究所・経済担当副所長のスコット・リンシコム氏はCNNで、「市場は少し安心したかもしれないが、大統領が関税をスイッチのようにオンオフして、90日後にはまた新たな関税が発動されるかもしれない状況で、どうしてアメリカが安全な投資先だと思えるだろうか。多少の猶予は得たが、まだ危機を脱したわけではない」と語った。

トランプ大統領は4月初旬に発動された多数の報復関税を90日間停止した。政権側は、多くの国々がアメリカとの交渉を求めていると説明している。一方で、中国への関税は、緊張の高まりの中で引き続き維持されている。

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、運輸相解任 理由公表せず

ビジネス

中国人民銀、一部金融機関に最近のドル安への見解尋ね

ビジネス

OPECプラス、9月に大幅増産へ 減産解消=関係筋

ワールド

EU、中国との気候共同行動宣言への署名を保留=FT
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 2
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中