最新記事
トランプ関税

ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税...トランプは何を勘違いしている?

ABSURD TARIFFS WILL BACKFIRE

2025年4月11日(金)12時50分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)
ホワイトハウスで相互関税を発表しアメリカは約50年間「略奪の限りを尽くされてきた」と主張したトランプ米大統領

ホワイトハウスで相互関税を発表しアメリカは約50年間「略奪の限りを尽くされてきた」と主張したトランプ米大統領(4月2日) AP/AFLO

<トランプ関税対象国は同盟国も敵対国も関係なし。時代錯誤で的外れのトランプ版「ガイアツ」がもたらすのは世界恐慌かもしれない>

これはアメリカの「経済的独立宣言」だ。米大統領ドナルド・トランプはそう称して、4月2日にグローバルな貿易戦争に火を付けた。ホワイトハウスの住人が経済の近現代史に関して、ここまで不条理な解釈を披露するのは前代未聞と言っていい。

トランプによれば、アメリカは「もう50年以上」「敵からも味方からも」「略奪と強奪の限りを尽くされてきた」。さらには事実を無視して「アメリカ企業は全く外国への進出を許されていない」と言った(現実にはアメリカの財・サービスの輸出は過去20年間で着実に増え、昨年は3兆ドルを超えている)。100年以上前にアメリカ政府が関税政策を捨てなければ、あの大恐慌はなかったとも言い放った。


そんな的外れな言葉を重ねた上で、トランプはほぼ全ての国に改めて高率関税を課すと宣言した。そうすればアメリカの「雇用と工場は再び勢いを取り戻し」、新たな「黄金時代」を築き、「2025年4月2日は米産業界が生まれ変わった日として永遠に記憶されるだろう」と。

あいにく、その可能性はほとんどない。むしろ逆で、トランプが世界経済に投下した中性子爆弾は、とりわけ国境を超えたサプライチェーンに依存するアメリカの大手製造業各社を死のスパイラルに追い込む可能性が高い。現に翌3日の株式市場ではテクノロジー株が暴落した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:気候変動研究に深刻な影響の恐れ、トランプ

ワールド

ガザ停戦合意巡り13日に国際首脳会合、トランプ氏ら

ワールド

北朝鮮が軍事パレード、新型ICBM公開 金氏は海外

ワールド

トランプ氏、心臓年齢は実年齢マイナス14歳 健康状
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決」が話題に 「上品さはお金で買えない」とネット冷ややか
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収された1兆円超は誰のもの? 中国は「返還」要求
  • 4
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 5
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 6
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 7
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 8
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 9
    【クイズ】ノーベル賞を「最年少で」受賞したのは誰?
  • 10
    サウジの伝統食「デーツ」がスーパーフードとして再…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 7
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 8
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中