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マクロスコープ:強気の孫氏、疑念深める市場 ソフトバンクG株高値から3割安

2025年12月05日(金)10時31分

写真は2月、都内で開催されたAI関連のイベントに出席する孫正義氏。REUTERS/Kim Kyung-Hoon

Yusuke Ogawa

[東京 5日 ロイター] - AI(人工知能)バブルかどうかなんて馬鹿げた質問だ──。ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は1日、東京都内で開かれた国際金融会議に登壇し、投資家の間にくすぶる「AIバブル論」を切って捨てた。ビジョンファンドで大赤字を計上し、「バブル状態だったと反省している。すべて指揮官としての私の責任だ」と述べた3年前とはまるで別人のようだ。ただ、同社株価は約1カ月前に付けた上場来高値から3割超下落。出資先のオープンAIに成長懸念が広がる中、強気の発言の裏には焦りも透けて見える。

<グーグル台頭で非常事態宣言>

「仮に今後10年間で10兆ドルを投資しても、わずか半年で回収できる。どこにバブルがあるのか」。「砂漠のダボス会議」と呼ばれる金融イベントのフューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)に姿を現すと、孫氏はAI分野への巨額投資の妥当性を強調した。AIがロボットを自律制御する「フィジカルAI」に限ってみても、10年後には世界の国内総生産(GDP)の1割、金額にして年間20兆ドルの市場を生み出せる、というのがその根拠だ。

トークセッションでは一貫して業績拡大への自信を示したが、市場の反応は芳しくない。夏場から急ピッチの株価上昇が続いていた反動もあって、好決算を発表したにもかかわらず、直近1カ月で約14兆円分の時価総額が吹き飛んだ。

株式市場が懸念するのは、オープンAIの成長持続性だ。米アルファベット傘下のグーグルが先月中旬、生成AIの最新モデル「Gemini(ジェミニ)3」を発表。高い性能が評判を集めたことで、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が社内に「コード・レッド(非常事態)」を宣言したという。ビッグテックと異なり、新興勢力であるオープンAIの経営基盤はぜい弱だ。対話型AI「Chat(チャット)GPT」は世界に8億人のユーザーを抱えるとはいえ、有料会員は全体の1割にも満たない。

データセンターの契約などに多額の費用がかかるため、英HSBCは「継続的に赤字を計上し、2030年までに2070億ドルの資金不足が生じる」と予測する。

SBGは年内をめどにオープンAIへの累計約350億ドルの出資を完了する見込みで、持ち株比率は11%に達する。ドイツ銀行はリポートで、オープンAIの企業価値がSBGの業績にとって重要な「変数」になると説明。評価額が1兆ドルに倍増すれば、SBG株は現在の株価(4日終値は1万8200円)を大きく上回る3万2200円まで上昇する余地があると試算する。

ただし、「少なくとも中期的に大幅なキャッシュフロー不足が続く」(ドイツ銀リサーチアナリストのピーター・ミリケン氏)ため、増資によるSBGの持ち分の希薄化は避けられそうにない。とすれば当然、得られる投資の果実は小さくなる。逆に、同社が期待通りに成長できなければ、大金を払い込んでいるSBGにとって経営上の深刻な打撃となる可能性もある。

<李大統領と会談、スターゲートに弾み>

とはいえ、明るい材料もある。SBGは11月下旬、米半導体アンペア・コンピューティングの買収を完了した。今後はSBG傘下の英半導体設計アーム・ホールディングスと組み、AIデータセンター向けCPU(中央演算処理装置)の開発を強化する計画だ。野村証券の増野大作リサーチアナリストは「(全米のAIインフラを整備する)スターゲート計画における5000億ドルの投資の中心はAIサーバーであり、SBGにとって自社チップによる収益機会は大きい」との見方を示す。

孫氏は今月5日、韓国を訪問して李在明大統領と会談する。スターゲート計画における半導体分野での連携を協議するとみられ、プロジェクト推進に向けて着々と手を打っている。

ただ、米ウーバー・テクノロジーズや中国のネット不動産仲介の貝殻找房など、国や業種をまたがって様々なユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)に投資をしていた頃と異なり、現在はAI関連企業にターゲットを絞って大量の株式を保有する。

ビジョンファンドの元幹部はロイターの取材に「孫さんは以前からAI時代を予見していただけに、勝ち筋がよく見えてきているのだろう」と語る一方で、SBI証券の鶴尾充伸シニアアナリストは「投資ポートフォリオの相関係数が非常に高く、収益の振れ幅が大きくなっているのは間違いない」と指摘。AIバブルの崩壊などに備えて「LTV(保有株式に対する純負債の割合)の引き下げを検討しても良いのではないか」と話した。

孫氏の「最後の賭け」はどう進むのか、世界中が固唾を飲んで見守る日々は来年も続きそうだ。

(小川悠介 編集:久保信博)

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