命がけの6日間――戦場からの脱出作戦【現場ルポ】 戦火のウクライナ、広がる兵役逃れの実態

DRAFT DODGING PLAGUES UKRAINE

2025年2月25日(火)10時34分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

20代のウクライナ兵、マキシム(仮名)。東部ドンバス地方で生まれ育ち、この地域で活動する親ロシア派武装勢力から故郷を守りたいと、2年制大学を卒業後すぐに職業軍人となった。

彼は戦場で日記を書いていた。そこには泥沼の東部戦線で揺れ動く心の軌跡がつづられていた。


初めての日記は開戦から70日後の22年5月4日。ロシア軍に包囲されたマリウポリが陥落する直前だった。

「忘れるな、戦争は終わっていない。一番大事なことは敵が自分の庭にやって来るまで待つ必要はないということだ。戦争に参加していない人たちよ、訓練を続けろ。私もかつて18歳で初めて銃を手にした。私たちは歴史的な時代に生きている」

次の日記は開戦125日目の6月28日。ヘルソン州やハリコフ州、マキシムの部隊があったドンバス地方でロシア軍が占領地を拡大していたときだった。彼はマシンガンを持ち、銃弾飛び交う最前線で戦っていた。

「『戦場はどうですか』と聞かれたら、『大丈夫です』『何も問題ありません』と答えるだろう。敵の攻撃を受けた瞬間に何が起こり、どのような感情があふれるか。実際に経験した人だけしか理解できないからだ」

脱走した6万人の軍人を起訴

10月、マキシムは激戦地バフムートでの任務に就いた。ロシアの民間軍事会社ワグネルの傭兵も投入された無法地帯だ。自陣が徐々に撤退を余儀なくされるなか、年末を迎えた。

「生きていてよかった、幸運だった。もっと不幸だった人がいる。さらなる苦難と困難な1年が私たちを待っている──2022年12月31日」

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