命がけの6日間――戦場からの脱出作戦【現場ルポ】 戦火のウクライナ、広がる兵役逃れの実態

DRAFT DODGING PLAGUES UKRAINE

2025年2月25日(火)10時34分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

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多くの人がティサ川を渡ってルーマニアへ脱出する(23年8月) TAKASHI OZAKI

──越境によく使われるティサ川は渡らなかったのか。

「ティサ川はロシアの国境より厳重に警備されている。有刺鉄線があり、止まらないと国境警備隊に射殺される。彼らは遺体が腐るのを待ち、溺死したと言って遺族に渡すそうだ」


──同行者のうち何人が成功したか。

「3人が国境警備隊に捕まり、脱出できたのは3人だけ。国境付近ではウクライナ語が通じて、僕たちは最寄りの警察署に行き難民として登録された。6月、ルーマニアでは1日平均150人を受け入れ、その3分の1はウクライナ兵だったらしい」

ボクダンによると、越境を手助けする斡旋業者に頼んだ場合、ガイドが同行すると1万8000〜2万ドル、ルート紹介のみだと1万ドルだという。

これまでに、ルーマニアへ越境したウクライナ人の成人男性は2万2000人との報道もある。今年1月、ウクライナの国家警察は違法な出国を斡旋したケースについて、600件以上の捜査をしていると発表した。

その後、ボクダンは欧州中央部の街にたどり着いた。今はパートナーと共に永住できる国で暮らしている。

ボクダンの証言で気になるのは、兵士の大量脱出だ。彼らはどのような経緯で部隊からの離脱を決断したのか。ある機械化旅団を脱走し、越境を計画している兵士がいると知ったのは新動員法が施行された頃だ。

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