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戦争

命がけの6日間――戦場からの脱出作戦【現場ルポ】 戦火のウクライナ、広がる兵役逃れの実態

DRAFT DODGING PLAGUES UKRAINE

2025年2月25日(火)10時34分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)
戦争の被害を受けたドネツク州ポクロウシク

ロシア軍が3キロまで迫ったドネツク州ポクロウシク(25年1月) PHOTOGRAPHS BY TAKASHI OZAKI

<ウクライナでは、厭戦ムードが広がり、徴兵を逃れるために国外脱出を図る若者が増え続けている。国境を越えられるのか、それとも射殺されるのか――。彼らは命をかけて脱出を試みる>

前編では、兵士の追加動員を進めるウクライナ政府の方針と、それに対する市民の反応を探った(前編はこちら)。後編となる本記事では、実際に脱出を試みた若者たちの声に耳を傾ける。

「出勤のため街に出るたび、戦争に連れて行かれないよう祈る。こんな国で暮らすのに疲れた」

そんな思いが募り、自力で国境を越えることを選んだのが、キーウのカフェで働く20代のボクダン(仮名)だ。

ルーマニアへ6日間の脱出作戦

決行は24年6月末。新動員法による登録情報の更新期限までに国境を越えることが目標だ。ボクダンは山岳観光の拠点として知られるウクライナ西部、イワノ・フランキウシク州ヤレムチェから移動を始めた。


人目をかいくぐり越境を試みられる場所は限られているが、ルーマニアとの国境付近に山河が広がるこの地域は比較的成功率が高いとされる。6日間に及んだ脱出作戦について、ボクダンは次のように証言した。

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TAKASHI OZAKI

──ルートはどう決めたのか。

「インターネットが届かない地帯があるので、オフラインでも機能する地図アプリを使った。85キロ走破したと記録にある。登山道を極力避け、雑木林や茂みの中に入っていった」

──食料はどうしたのか。

「キノコ入り麺、チーズ入りトウモロコシがゆなどお湯を注いで調理するもの、チョコレートバーを用意した。食材は7日分持っていった」

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