命がけの6日間――戦場からの脱出作戦【現場ルポ】 戦火のウクライナ、広がる兵役逃れの実態

DRAFT DODGING PLAGUES UKRAINE

2025年2月25日(火)10時34分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

バフムートの陥落が近づいた23年4月6日、マキシムは離れ離れになった彼女への想いをつづった。

「一緒に過ごした全ての時間、全ての瞬間はかけがえのないものだ。私はいつも君を必要としている、君なしでは生きていけない。ただ、いつもそばにいてほしいだけ。私を笑顔にしてくれるのは君だけだ」


そして、反転攻勢の失敗が明らかになってきた23年9月27日、怒りと失望に満ちた日記を書いた。

「もう我慢できない。何をしているんだ、このクソ野郎ども。建物が修復されたとか、タイルが敷き直されたとか、道路が修復されたとか、そういうニュースを見ると手が震えてくるよ。これはマネーロンダリングしたい泥棒たちの仕業だ。

病人や学生に対する兵役要請までしているというのに、汚職のせいでウクライナへの武器供与が滞っているという。戦争の帰趨はこの武器に懸かっているんだぞ。このような腐敗があれば、EU諸国の誰も私たちを必要としない。ウクライナは支援金で賄われる国になってしまう」

開戦から2年が過ぎた24年3月20日、マキシムは完全武装のセルフィー写真を添えた日記を書いた。

「私が幸せになるために必要なのはベルゴロドの幼稚園と迫撃砲だけだ」

3月15~17日にロシアで大統領選挙が行われたが、ロシア・ベルゴロド州にある選挙管理委員会を狙った砲撃で、隣接する幼稚園の外壁に被害が出た。添えられた写真のマキシムはかすかな笑みを浮かべている。これが戦場で書いた最後の日記になった。

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