尹錫悦大統領には「トランプ」という切り札がある!?...不正選挙の陰謀論に手を差し伸べてくれる

TRUMP: THEIR LAST HOPE

2025年2月18日(火)18時47分
ミシェル・キム(米弁護士、在ソウル)

newsweekjp20250218062804-96bd539613f98a982d4d23c8f21e0c5d1ccf602f.jpg

憲法裁判所で行われた弾劾審判に出席した尹大統領(写真左、2月4日) LEE YOUNG-HOーSIPA USAーREUTERS

尹は独裁のたくらみを、中国のスパイによる内政干渉を見事に阻止したという手柄話につくり替えた。

弾劾訴追案が採決される前に行った国民向けのテレビ演説では、戒厳令の宣布を正当化。理由として中国による安全保障への脅威を挙げ、中国のスパイ活動が米韓の軍事同盟を標的にしていると主張した。

韓国政界の根強い嫌中感情は、冷戦の遺産から生まれたものだ。韓国は領土問題をめぐって中国と論争を続け、最近では米軍のミサイル防衛システムを配備したことで中国から経済的報復を受けた。


こうした嫌中感情に乗じて尹がでっち上げたのが、昨年の総選挙で与党が敗北した裏で中国が糸を引いていたという説だ。

弾劾訴追案の可決後にはフェイスブックへの投稿で「不正な選挙システムが、国際的な同盟と政治勢力の協力によってつくられていた」と主張。共に民主党が中国と共謀して不正選挙を行ったという見方を示した。

尹の支持者はこうした過激な主張に反応し、中国に対抗する急先鋒で不正選挙の陰謀論を唱えるトランプにすがった。

彼らはソウルの街頭やネット上のフォーラムで、尹の政敵であり、次期大統領選の最有力候補と目される共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が「中国共産党」の後押しを受けていると主張。

彼らの多くが信奉している福音派の表現を借りて、トランプには中国を解体する「救世主としての使命」があると訴えた。

ソウル西部地裁を襲撃した暴徒らは、オルタナ右翼の陰謀論サイト「新男性連帯」に、自分たちにはまだ「トランプという切り札がある」というメッセージを書き込んだ。

国民の力は、尹の権威主義的な策略を正当化するため、支持者が唱える陰謀論を拡散させている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国製造業PMI、12月は9カ月ぶり節目回復 非製

ビジネス

エヌビディア、イスラエルAI新興買収へ協議 最大3

ビジネス

ワーナー、パラマウントの最新買収案拒否する公算 来

ワールド

UAE、イエメンから部隊撤収へ 分離派巡りサウジと
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中