最新記事
荒川河畔の「原住民」(21)

ホームレスが「かりゆし58」前川真悟さんと作った名曲「かわがないてるよ」を知っているか

2025年2月14日(金)18時00分
文・写真:趙海成
「かりゆし58」の前川真悟さんとホームレスの征一郎さん

「かりゆし58」の前川真悟さん(左)とホームレスの征一郎さん(右) 写真: @shingomaekawa

<小さい頃から歌が好きで、作詞を続けてきた荒川河川敷に住むホームレス。ついに有名な歌手とコラボし、曲を作ることになった。そこには彼の「生きること」に対する想いが込められていた。在日中国人ジャーナリスト趙海成氏による連載ルポ第21話>

2020年12月9日、沖縄の4人組バンド「かりゆし58」のギターボーカリスト前川真悟さんが、荒川河川敷に住むホームレスの征一郎さんと共作した歌「かわがないてるよ」がリリースされた。前川さんが作曲と歌、征一郎さん(リリース時の表記はひらがなで「せいいちろう」)は作詞を担当し、ミュージックビデオにも出演した。

社会貢献とエンターテインメントの融合を目的とした新しい試みであり、広く注目されるはずだった。征一郎さん自身も、この曲で有名になって、プロのミュージシャンになる夢を叶えたいと思っていた。しかし残念なことに、コロナウイルスの感染拡大があり、征一郎さんの音楽への道も途絶えてしまった。

荒川に架かる戸田橋の下の荒涼とした場所で征一郎さんを取材したとき、この歌がネット上に残っているかどうか調べてほしい、と頼まれた。

彼の目の前でスマホに「かわがないてるよ」と入力して検索すると、征一郎さんが制作に参加したこの歌は無料で聴けるだけでなく、彼が出演したミュージックビデオや歌手の前川真悟さんと一緒に写った写真もネットに上がっていた。

征一郎さんはそれを見てとても興奮し、私も喜んだ。

この「かわがないてるよ」という歌は大ヒットしたわけではないが、今でもネット上でいつでも聴くことができる。征一郎さんにとって、なにより喜ばしいことだろう。

征一郎さんが描いた絵

征一郎さんが描いた絵

読者の皆さんも、ぜひネットで調べて聴いてみてほしい。ここではまず、彼が書いた歌詞を公開して、皆さんに共有したい。


「かわがないてるよ」

たまにかわがないてるよ
じだいのながれにながされて
たまにかわがないてるよ
じだいのながれにとまどって

かわはせんそうもじしんもみてきたんだ
そして自分でいのちをたちにくるひとも
なにもかも かわには なにも かくせないんだ

たまにかわがないてるよ
いじめられてきたんだな
ここでは自分をごまかさなくてもいいんだ

かえるときになやみはすてて
かわはなにもいってくれないけど
きっときみをいやしてくれる
いつでもきがるにまたおいで
くればほんねの自分でいられる

たまにかわがないてるよ
じだいのながれにながされて
たまにかわがないてるよ
じだいのながれにとまどって

ここでは自分をごまかさなくてもいいんだ

試写会
『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英ヒースロー空港再開へ、インフラの脆弱性示唆の声も

ビジネス

中国人民銀、為替市場の回復力強化を提案

ワールド

米、ガザ攻撃再燃「ハマスに全責任」と非難 国連安保

ワールド

トランプ氏、ボーイングと次世代戦闘機契約 「F47
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 5
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 7
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 8
    医師の常識──風邪は薬で治らない? 咳を和らげるスー…
  • 9
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 9
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 10
    ローマ人は「鉛汚染」でIQを低下させてしまった...考…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中