イランの弱体化でトランプは中東安定化の好機を生かせるか

MIDDLE EAST

2024年12月26日(木)13時10分
デニス・ロス(ワシントン中近東政策研究所)

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ネタニヤフは2024年7月、米議会でイランの脅威を力説 ANNA MONEYMAKER/GETTY IMAGES

イランの代理勢力として最も重要なヒズボラは、シリアでイランの遊撃部隊として行動し、イスラエルによるイランの核関連施設攻撃に対する抑止力として15万発のロケット弾を誇示してきた。だが、その抑止力も今や消滅したも同然だ。

イスラエルのヨアブ・ガラント前国防相によれば、ヒズボラはロケット弾のおよそ80%を失った。イスラエルはヒズボラ指導部の多くを殺害し、指揮管理系統を破壊し、通信手段を混乱させ、レバノン国内での立場を弱体化させた。


少なくともイラン主導の「抵抗の枢軸」は深刻な打撃を受けた、イスラエルによる防空・ミサイル防衛システムの破壊で痛手を被ったイラン本国も同様だ。そのため最高指導者アリ・ハメネイ師に助言する立場のカマル・ハラジ元外相など、イランの有力者の一部は抑止力強化のための核武装を口にし始めた。

だがトランプの政権復帰が決まった今、それは極めて危険だ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は既に、イランの核開発計画についてトランプと話し、「完全な意見の一致」を見たと語っている。

トランプは戦争を終わらせるとアピールしている。そのためアメリカが直接関与するよりも、ネタニヤフにイランの核関連施設を破壊する許可を与え、必要な手段を提供することを選ぶのではないかと考える。

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