イランの弱体化でトランプは中東安定化の好機を生かせるか

MIDDLE EAST

2024年12月26日(木)13時10分
デニス・ロス(ワシントン中近東政策研究所)

トランプの対イラン政策は「最大限の圧力」であり、目的は必ずしも体制変革ではなく行動を変えることだ。イスラエルの軍事力による威嚇とイラン産原油への制裁強化を通じて、新たな核合意の可能性を探るシナリオは十分にあり得る。イランとのディール(取引)は第2期政権の目標の1つだと、トランプは繰り返し発言している。

確かにトランプ政権1期目には、イランはトランプとの取引に応じる意思をほとんど見せなかった。トランプの最大限の圧力に、イランは最大限の抵抗で答えた。サウジアラビアの最も重要な石油施設を攻撃し、自国が支援するイエメンのイスラム教武装組織フーシ派にもサウジアラビアへのミサイル攻撃を実施させた。業を煮やしたトランプは、イラン革命防衛隊の精鋭部隊を率いるガセム・ソレイマニの殺害を命じた。


以後イランは慎重になり、1期目のトランプ政権が終わるまでは、核開発の推進や代理勢力を使ったイラクとシリアの駐留米軍への攻撃強化を見合わせた。そして2期目のトランプ政権が発足しようとしている今、イランの代理勢力はトランプ1期目と比べ大幅に弱体化している。

イランは2期目のトランプとの取引に応じるだろうか。ハメネイは常々アメリカはイランの譲歩だけでは満足せず、イランの現体制を倒そうとしていると述べているから、現時点では取引成立は望み薄なようだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBウォラー理事、12月利下げを支持 「労働市場

ワールド

トランプ氏、サウジへのF35戦闘機売却方針を表明 

ビジネス

アルファベット株、一時最高値更新 バークシャーの保

ワールド

チェコとスロバキアでビロード革命記念日、民主主義の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中