最新記事
遺跡

先住民が遺した壁画に「当時の人類が見たはずがない生物」が描かれていた「謎」...南ア大学チーム

Mysterious Rock Art May Depict 'Strange' Animal From 250 Million Years Ago

2024年9月22日(日)13時05分
アリストス・ジョージャウ
壁画に描かれていたのはディキノドン類の可能性

写真はイメージです Tatiana_kashko_photo/Shutterstock

<南アフリカ先住民の遺跡に描かれた壁画に、人類が誕生する以前に絶滅したはずの獣弓目と見られる動物の姿があるのを、大学の研究チームが発見した>

2億年以上前の地球上に生息し、最初の人類が現れるずっと前に絶滅した「不思議な動物」が、南アフリカの先住民が遺した謎の壁画に描かれている可能性が浮上した。南アフリカ、ウィットウォーターズランド大学の研究によれば、壁画に描かれた多様な動物の中にいる「長い胴体と下向きの牙を持つ」正体不明の動物は、獣弓目の一種である可能性があるという。

■【写真】なぜ? 先住民の壁画に「人類誕生前に絶滅したはずの古代生物」の姿が...大学研究チームが謎に挑む

学術誌「PLOS ONE」に発表された研究論文の著者は、南アフリカ、フリーステイト州にあるラ・ベル・フランス遺跡の岩壁の一部「ホーンド・サーペント(ツノのあるヘビ)パネル」を調査した。これは、現地の狩猟採集民族、サン族(San people)が、少なくとも200年以上前に描いた壁画があるセクションだ。

これらの壁画は、短く張り出した砂岩が屋根のようになった岩陰の遺跡にあり、サン族に関連する動物などが描かれている。そうした動物の一つに、長い胴体と下向きの牙を持つ謎めいた生き物がある。

この動物は、壁画が描かれた1821~1835年に一帯に生息していた既知のどの種とも一致していないように見える。南アフリカ、ヨハネスブルクにあるウィットウォーターズランド大学のジュリアン・ブノワは、この動物はディキノドン類を描いたものだという仮説を提唱している。

ディキノドン類は、カメのようなくちばしと、セイウチのような牙を持つ草食動物だった。最初の恐竜より早く現れ、約2億6500万万年前から約2億年前にかけて存在した。中生代(約2億5200万~6600万年前)後期に、哺乳類へと進化した不思議な生き物のグループ、獣弓目に属している。

遺跡の周辺では多くの獣弓類の化石が発見されている

サン族は、動物や化石など、自分たちが暮らす環境のさまざまな側面を芸術に取り入れていることで知られる。

ブノワは本誌の取材に対し、ホーンド・サーペント・パネルが存在する南アフリカのカルー盆地には、「信じられないほど大量かつ多様」な獣弓類の化石が存在すると話している。南アフリカの面積の3分の2を覆うその地層は、「カルー超層群」と呼ばれている。

カルー超層群では、ディキノドン類の化石も発掘されており、地表に露出していることも少なくない。ラ・ベル・フランス遺跡で発見されたディキノドン類の化石は、おおむね2億5000万年ほど前のものだ。

ブノワは研究論文の中で、ディキノドン類の化石について、「多くの場合、浸食によって頭蓋骨が自然に露出しているため、見つけやすく採取しやすい。また、牙が目立つため、素人目にも、その解剖学的特徴を解釈するのは難しくない」と述べている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豪GDP、第3四半期は前年比2年ぶり大幅伸び 前期

ビジネス

アンソロピック、来年にもIPOを計画 法律事務所起

ワールド

原油先物は続落、供給過剰への懸念広がる

ビジネス

来年末のS&P500、現行水準から10%上昇へ=B
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中