最新記事
日本

日本の航空自衛隊、中国機とロシア機に対する「緊急発進」回数を発表

US Ally Releases Update on Russia and China Air Threat

2024年7月16日(火)19時22分
ライアン・チャン
沖縄上空を飛ぶ中国のH-6爆撃機

沖縄本島と宮古島の間を抜けた中国のH-6爆撃機(2013年10月27日、航空自衛隊撮影) REUTERS/Joint Staff Office of the Defense Ministry of Japan

<日本はロシア、中国、北朝鮮からの脅威に対抗する上でアメリカの重要な軍事パートナーだ>

日本の航空自衛隊による2024年度第1四半期の緊急発進(スクランブル)が、前年同期よりも減少したことが明らかになった。そのほぼ全てが、ロシア機と中国機への対応だった。

防衛省の統合幕僚監部は7月11日に四半期報告書を発表し、2024年4月1日〜6月30日までの航空自衛隊の緊急発進の実施状況を明らかにした。それによれば対象期間の緊急発進は159回で、前年同時期の238回と比べて減少した。

同報告書によれば、緊急発進回数が高い水準で推移し始めた2013年度以降の四半期実績は約100~350回で、今回の159回は平均的な水準にある。

日本の航空自衛隊はF35Aステルス戦闘機をはじめ、世界トップクラスの近代的な航空機の数々を保有しており、ロシア、中国と北朝鮮からの脅威に対抗する上でのアメリカの主要な軍事パートナーだ。

航空自衛隊の戦闘機は、日本の領空を侵犯するおそれのある、あるいは領空を侵犯した外国の航空機に対して、要撃機を緊急発進させて退去を警告するなどの対応を取っており、そのほとんどが日本海および中国との領有権争いがある東シナ海の上空で発生している。

「その他」の2回の相手は不明

第1四半期の緊急発進のうち、中国機に対する緊急発進回数は全体の約66%にあたる105回、ロシア機に対する緊急発進回数が約33%にあたる52回だった。残りの2回については「その他」として詳細は明らかにされていない。本誌はこの件について中国とロシアの国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

報告書によれば、緊急発進のうち82回は琉球諸島に配備されている南西航空方面隊が実施した。東シナ海と接する琉球諸島には現在、日本に配備されている米軍部隊の半分が駐留している。

琉球諸島の北には九州があり、航空自衛隊の各種作戦で「西部方面」と呼ばれるこの地域では28回の緊急発進が行われ、北海道周辺の「北部方面」では44回の緊急発進が行われた。日本最大の島である本州の「中部方面」で行われた緊急発進は5回のみだった。

統合幕僚監部の報告書には、緊急発進の対象となった中国機およびロシア機の飛行パターンを示す地図が添付されており、その大半は東シナ海上空と日本海上空だった。

newsweekjp_20240716104634.png

この地図を見ると、日本の防衛当局は台湾(中国は中国の一部と見なしている)の東側を飛行する中国機の存在を検知している。日本政府は、台湾海峡での軍事的緊張がエスカレートする可能性を警戒している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ボルソナロ氏長男、穏健政策訴えへ 出馬意向のブラジ

ビジネス

11月の基調的インフレ指標、加重中央値と最頻値が伸

ワールド

米、ナイジェリア上空で監視飛行 トランプ氏の軍事介

ビジネス

仏、政府閉鎖回避へ緊急つなぎ予算案 妥協案まとまら
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中