最新記事
新冷戦

NATOの東部前線を「鉄壁化」せよ──独基地からポーランドに移る米軍のエイブラムス戦車が目撃される

US Tanks, Combat Vehicles Spotted Heading for NATO's Eastern Flank: Report

2024年7月31日(水)18時24分
ブレンダン・コール
端が見えない!エイブラムスの長い車列

ポーランド陸軍に供与されたエイブラムス主力戦車の車列 EuroTravel/YouTube

<米軍が欧州における戦力をNATO東端のポーランドに移す一方で、ロシアはT-90M戦車でエストニアやフィンランドを脅かしている>

ポーランドの高速道路を走行する米軍の軍用車両の車列が撮影された。NATO圏の東端に位置するポーランドに、軍の装備を移動させているのだ。

【動画】端が見えない!エイブラムスの長い車列

ポーランドの報道機関「ラジオZET」は戦車の車列の写真を掲載し、西部のルブシュ県およびヴィエルコポルスカ県の道路には軍用車両が増えているとする住民の声を伝えた。

ラジオZETによれば、米軍は、今後9月末までに、装備をドイツのマンハイムにある米軍基地から、ポーランド中央部のポヴィツに移動させる計画だという。ポヴィツには、NATOが資金を拠出して整備した、米軍の軍備保管施設「陸軍事前集積貯蔵所」(APS)がある。

ポヴィツの保管施設は空港に隣接しており、空路による迅速な装備移送が可能なほか、必要であれば弾薬も運ぶことができると、ラジオZETは報じている。この拠点には、最終的に戦車87両、歩兵戦闘車(IFV)150両以上、自走式榴弾砲18基が配備される予定だ。

アメリカ陸軍は6月に、「M1エイブラムス」主力戦車14両と「M88」走行回収車1両がこの拠点に到着したと明らかにしていた。この拠点は、ポーランドとウクライナの国境から約約400キロ西に位置している。

東部前線へたった数日

退役米陸軍大佐のレイ・ボイチックは6月の時点で本誌の取材に対し、ゆくゆくはこの施設には機甲旅団1個分に相当するフル装備が配備されるとの見方を示していた。ロシアに強いメッセージを送る動きだ。何しろこの施設の軍事装備は、数日で前線に配備できる。船で1カ月も待つ必要はない。

「同盟国と共同でNATOの東部前線を『鉄壁化』する取り組みの上で、このことが持つ意味は大きい。負担も分担し、抑止と防衛協力の好例だ」。現在は米シンクタンク・欧州政策分析センター(CEPA)の上席研究員を務めるボイチックはそう指摘した。

「2014年以降、我々はこの東部前線でアメリカ軍の力を誇示する取り組みを行なってきたが、その内容は限定的だった。もっと多くの手を打たなければならない」とボイチックは述べた。

「さもなければ、『失敗した』抑止が続くだろう。ロシアのクリミア併合という2014年のような事態がまた起きれば、次に待っているのは、2022年の再現だ」とボイチックは述べた。2022年とは、ウクライナへの本格侵攻だ。

NATO東端に位置するポーランドでの軍備増強は、ウクライナ侵攻をめぐってロシアとの緊張が高まる中で行われた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中