最新記事
中国脱出

中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?

China's Millionaires Are Leaving the Country

2024年6月27日(木)18時33分
マイカ・マッカートニー

英金融サービス会社・リフィニティブのデータによれば、アリババ、騰訊(テンセント)など中国のテック大手5社の株式時価総額は2020年末から2023年7月までに合計1兆ドル以上も縮小した。

規制強化に「地方の起業家が恐れをなし、国外の比較的安全な避難先に逃れようとしているようだ」と、マーは言う。

不動産価格の下落とデフレ圧力で「ドル建てと人民元建て資産の収益格差が広がっている」ことも資産家の国外脱出の増加を促していると、マーは見る。


 

また、中国人起業家や投資家が「国内政治と地政学的なリスクの高まり」を懸念し、資産の分散を図っていることも脱出増加の一因になっているという。

ミリオネアの大脱出について、在米中国大使館の劉鵬宇(リュウ・ペンユー)報道官に聞くと、「経済のグローバル化で、各国間・地域間の移住の自由と魅力が大幅に拡大した。移住は個人の選択だ」との答えが返ってきた。

とはいえ、「長期にわたり成長を続けるという中国経済の基本的な流れは変わらず」、中国は今後も外国人にとって、学ぶにも生活するにも働くにも魅力的な国であり続ける、と劉は主張した。

3位はインド、2位は意外な国

富裕層の国外移住の多さで中国、イギリスに次いで世界第3位のインドは、「経済成長に伴い、新興のミリオネアが多数生まれている」と、英シンクタンク「英国政府研究所」のハナー・ホワイトCEOはH&Pの報告書で論じている。「ただ、中国は近年、成長が鈍化しており、時間が経つにつれ、長期的な損失が拡大する恐れがある」

H&Pによれば、中国のミリオネアは2013〜2023年に92%も増加したが、不動産価格の下落は止まらない。不動産部門は中国のGDPの推定25〜30%を占めていて、不動産危機が始まる前は、中国人の世帯資産のざっと7割が不動産関連だった。

中国の民間シンクタンク胡潤研究所が発表した今年の富豪ランキング「胡潤百富榜」によると、経済成長の鈍化に伴い、中国ではビリオネア(純資産10億ドル以上)が前年に比べ155人減り、19%のマイナスを記録したという。

今年に入り、信用格付け会社フィッチとムーディーズがそろって、中国の国債の格付けを「安定的」から「弱含み」に下げた。債務の重圧と財政再建の困難さを考慮しての評価だ。

富裕層の流出で中国に次いで世界第2位のイギリスからは、今年9500人のミリオネアが国外移住する見込みで、この数は昨年のおよそ2倍に相当すると、H&Pは報告している。

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中